NEWS

2025.03.06 19:09:12

女性パラ選手特有の悩みも共有…月経痛をパラの男性強化担当者がセミナーで「体験」

 障害がある女性アスリート特有の課題への理解を深めようと、日本パラリンピック委員会(JPC)が、各競技団体で強化を担当するハイパフォーマンスディレクター(HPD)らを対象にしたセミナーを開いた。

 月経痛は女性アスリートのパフォーマンスに大きく影響するが、パラ競技の選手の場合、基礎疾患のために使える薬が限られるなど特有の問題がある。1月に行われたJPC女性スポーツ委員会のセミナーでは、産科医でもある能瀬さやか委員長が、月経の基礎知識について講義し、月経対策として5~6割がホルモン製剤を用いている海外のトップアスリートの事例などが紹介された。

 数人ずつの班に分かれたグループワークも行われ、それぞれの競技のHPD同士が、選手の月経への対処の仕方について、悩みや解決策などを共有。「生理痛VR(仮想現実)デバイス」と呼ばれる特殊な機器を使って、男性のHPDらが生理痛を疑似体験した。

 パラのHPDが一堂に会して学ぶ機会は初めて。日本パラ陸上競技連盟で知的障害クラスを担当する奥松美恵子HPDは、「生理は突然やってくるので、自閉的傾向がある選手だとスケジュールの変化には適応が難しい。グループワークで、あらゆるパターンを想定して、パニックへの対処法を作っておくといいとアドバイスをもらえたのも良かった」と話した。JPCでは今後もセミナーを開催する予定だ。(編集委員 川島健司)

2025.03.05 19:51:59

「結晶スポンジ法」改良、大きな分子の構造解析に成功…東大の研究チーム「創薬につなげたい」

 微小な穴が規則正しく並んだ「結晶スポンジ」と呼ばれる物質を使い、従来は難しかった大きな分子の構造解析に成功したと、東京大の藤田誠・卓越教授らのチームが発表した。次世代薬の材料を探す研究に応用が期待されるという。論文が5日、科学誌ネイチャーケミストリーに掲載された。

 医薬品の材料になる物質の分子構造は、効果などに影響するため、X線を使った正確な解析が求められている。解析には分子が規則正しく並んだ「結晶」を作る必要があるが、難易度は高く、時間もかかっていた。

 チームはこれまで、結晶化したスポンジ状の物質に、解析する試料を染みこませる「結晶スポンジ法」と呼ばれる手法を開発。一つ一つの穴に試料の分子を整然と並べることで、結晶化した時と同様の解析ができる。

 チームは今回、この手法を改良した。従来の手法は、サイズの小さい「低分子」しか解析できなかったが、分子をとらえる穴をかご状にすることで、より大きい「中分子」の解析も可能になった。

 さらに従来は難しかった水に溶けやすい試料の解析も可能になり、活用の幅が拡大。1試料あたりの解析時間も1か月から1日に短縮し、100種類超の構造を数か月で解析できたという。

中分子の化合物を使った「中分子薬」は、既存薬で治療が難しい病気にも効果のある次世代薬として研究が進む。藤田氏は「(自然界には)薬の元になる無数の宝がある。通常は検知さえ難しい物質を解析し、創薬につなげたい」と話す。

 藤田氏は、分子がひとりで組み上がる「自己組織化」という現象を利用し、様々な形状の物質を作り出す研究を進めてきた。結晶スポンジ法も、この研究の応用で開発され、藤田氏は一連の成果でノーベル化学賞の有力候補にも名が挙がる。

 河野正規・東京科学大教授(結晶化学)の話「解析例はまだ少ないが、今後様々な中分子に適用できれば、創薬の効率化などに貢献すると期待できる」

2025.03.05 14:59:00

石破首相、大船渡の山林火災「激甚災害」指定を検討…「自治体の金銭負担も少なくて済むよう対応」

高額療養費巡っては、がん患者との面会に前向き

 参院予算委員会は5日午前、石破首相(自民党総裁)と全閣僚が出席する基本的質疑を行い、2025年度予算案の修正案が実質審議入りした。首相は岩手県大船渡市の山林火災について、激甚災害の指定を検討していると明らかにした。

 首相は、同市で続く山林火災を巡り、「激甚災害(の指定)ということも視野に入っている。自治体の金銭負担も少なくて済むような迅速かつ適切な対応を政府として心がけていく」と答弁した。激甚災害に指定されると、自治体による復旧事業に対する国の補助率が引き上げられる。

 医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」の見直しに関しては、「この制度を持続可能なものとし、『もう受けるのやめようか』という受診抑制が起こらないこととの両立を図りたい」と理解を求めた。

 政府は8月からの負担上限額引き上げは予定通りに実施する一方、来年8月以降の対応は今年秋までに再検討する方針だ。がん患者との面会を促されると、「日程は調整したい」と前向きな姿勢を見せた。

 いずれも立憲民主党の田名部匡代・参院幹事長の質問に答えた。

2025.03.03 19:16:25

親子サッカー会場で意識失った男性、コーチ・保護者がAED連係プレー…命救った6人に感謝状

 茨城県日立市消防本部は2日、AED(自動体外式除細動器)を使い、迅速な連携プレーで、倒れた50歳代の男性の命を救ったとして、6人に感謝状を贈った。

 男性が突然倒れたのは1月12日午前。日立市みなと町のグラウンドで行われたサッカー少年団の親子による試合形式の練習に参加し、終えた時だった。

 コーチの三浦淳一さん(51)が、駆け寄って声をかけたものの意識がない。横向きにして気道を確保しながら、周囲に119番を頼んだ。

 近くの久慈交流センターに保護者の一人、石井麻子さん(37)が駆け込んだ。職場で救急の講習を受けた経験があり、センターにAEDがあることも知っていた。

 もう一人のコーチ、前野豊さん(68)は防災士の資格を持つ。石井さんとともにAEDの電極パッドを男性の胸に貼っていく。「ショックが必要です」と音声ガイドが心肺停止の状態を伝えた。

 AEDを使用すると、反応があり今度は前野さんと保護者の西岡吉久さん(56)が交代で心臓マッサージを続け、通報から8分後に到着した救急隊に引き継いだ。男性は病院へ搬送され、現在は後遺症もなく社会復帰したという。

 市消防本部は、この4人を含む6人に感謝状を贈った。前野さんは「救命講習を受けていたことが生きた」と振り返った。

 市内では公共施設約170か所とコンビニ72店舗にAEDが置かれている。1994年以降、延べ約8万2000人が救命講習を受けている。

2025.02.28 12:23:36

高額療養費の負担上限引き上げ、石破首相が「再検討」表明へ…「凍結」主張の立憲民主に配慮

 政府・与党は27日、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」について、自己負担の上限額引き上げを再検討する方針を固めた。石破首相が28日の衆院予算委員会で、立憲民主党の野田代表の質問に対して方針を表明する方向だ。

 複数の政府・与党関係者が明らかにした。予定通り今年8月に引き上げを実施して2026年度以降の対応を改めて検討する案が政府・与党内で出ている一方、開始時期の延期論もある。与野党で協議体を設けて制度のあり方を議論する案も浮上している。

 上限額の引き上げには、患者団体などから批判が出ている。政府はすでに長期治療が必要な患者を巡って方針を一部見直す考えを示したが、立民はさらに引き上げの凍結を求めている。

 政府・与党は、衆院予算委員長のポストを握る立民に歩み寄ることで25年度政府予算案の委員会採決の環境を整えたい考えだ。立民の重徳政調会長は27日、自民、公明両党の政調会長と国会内で会談し、改めて凍結を求めた。

 政府は上限額の引き上げについて、今年8月から27年8月に3回に分けて年収や年齢に応じた区分ごとに行う予定を示している。年収約510万~約650万円の場合、上限の基準額は現行の月約8万円から約11万3000円に増える。

 一方、厚生労働省は今月、引き上げ方針を一部見直し、長期治療が必要な患者については、1年間のうち3回上限額を超えた場合、4回目以降は上限額を現行水準に据え置くことを決めた。

8

投稿はありません