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2025.03.11 13:53:20

「木の実」の食物アレルギー増加、カシューナッツ表示義務化へ…意識障害など重篤な症例も

 くるみやカシューナッツといった「木の実類」が原因の食物アレルギー疾患を持つ人が近年、増えている。木の実類は菓子に使われることも多く、摂取した子供が重篤な症状に陥った事例も報告されている。消費者庁は2025年度中に、アレルギー表示が義務付けられる食品の対象にカシューナッツを加え、事業者らへの周知を図る方針だ。

 同庁が23年に行った食物アレルギーによる健康被害の実態調査では、原因となった食べ物のうち、木の実類は24・6%で、鶏卵(26・7%)に次いで2番目に多かった。14年の調査ではわずか3%程度だったが、健康志向の高まりでナッツ類を食べる機会が増えたことが要因と考えられ、約10年で大幅に割合が増加した。

 国は、摂取した際にアレルギー症状を起こす症例が多い食品などを「特定原材料」として指定し、アレルギー表示を義務付けている。現在は木の実類のくるみのほか、卵(鶏卵)、エビ、カニ、落花生などの計8品目が対象になっている。

 木の実類は砕かれた状態でケーキやアイスなどの菓子や総菜に使われることも多い。木の実類が入っているという認識がないまま食べてしまう事例もあるとみられ、特に子供では、意識障害などの重篤な症例に陥ってしまうケースが増えている。

 現在、アレルギー表示が推奨される品目に位置づけているカシューナッツについて同庁は、25年度中にもアレルギー表示の義務付け対象にすることを決めた。カシューナッツは、3~17歳がアレルギーになった原因食品の上位にあることや、17年に82件だった症例数が、23年には279件になるなど、「症例数の増加が著しい」と判断した。また、同様に症例数の増加が見られる木の実類のピスタチオも、アレルギー表示が推奨される品目に新たに加える見通しだ。

 同庁は、事業者が食品にアレルギー表示をしていなかったり、ラベルの貼り間違えをしたりする事例も多いとして、「食べた人に重篤な影響を及ぼす可能性があるので、事業者は表示のチェックに一層注意してほしい」としている。

2025.03.10 17:54:26

万博で119番、AEDを現場に運搬・発生場所をスタッフに通知…スマホアプリを導入へ

 来月13日に開幕する大阪・関西万博の安全対策を強化するため、日本国際博覧会協会(万博協会)は、情報通信技術(ICT)を活用し、AED(自動体外式除細動器)を素早く現場に届けるシステムを導入する。人が倒れた場所などをスマートフォンのアプリでスタッフに知らせ、AEDを運んでもらう仕組み。国内の大型イベントでは初の導入事例になるといい、救命処置の効率化や迅速化に役立てたい考えだ。(中村直人)

 アプリは「AED GO」で、京都大とソフトウェア開発会社「ドーン」(神戸市)が2017年に共同で開発した。119番などを受けると、発生場所や近くのAED設置場所を周辺の地図とともに専用のアプリで通知。事前に登録したボランティアらに駆け付けるように求める。愛知県尾張旭、千葉県柏、奈良の3市で運用されている。

 今回はイベント向けに仕様を変更。昨年夏頃に着手し、パビリオンの位置などが分かる万博の会場マップを取り込んだり、スタッフらが相互で情報をやり取りできるチャット機能を追加したりした。

 心停止となると、救命率は1分ごとに約10%ずつ低下するとされる。一方、総務省消防庁によると、救急車が現場に到着するまでには平均10分かかる。23年に人前で心停止状態となり、搬送された2万8354人のうち、市民がAEDで電気ショックを行ったのは5%にとどまり、使用率の向上が課題となっている。

 万博の会期は10月13日までの184日間で、来場者数は約2820万人と想定される。大阪市の人工島・ 夢洲ゆめしま に設けられる会場(約155ヘクタール)では屋内外に150台以上のAEDが設置される予定だ。05年の愛・地球博(愛知万博)では約100台が設置され、4人の救命に役立てられた。

 京都大研究員として開発チームに参加している大阪急性期・総合医療センター救急診療科の木口雄之副部長は「世界中から来場者を迎える万博は、国内だけでなく世界的な関心も高くなる。ICTを使うことで救命率の向上を図り、安心・安全な万博運営につなげたい」と話している。

 ◆ AED(自動体外式除細動器) =血液を全身に送り出す心室がけいれんする不整脈の一つ「心室細動」を起こして心停止になった場合に、心臓に電気ショックを与え、正常なリズムで収縮できるようにする医療機器。体外(裸の胸の上)に貼った電極の付いたパッドから自動的に心臓の状態を判断する。

2025.03.07 19:53:11

高額療養費制度の自己負担上限引き上げ、方針見直し異例の3回目…見送り含め政府・与党内で協議

 政府・与党は7日、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」について、今年8月からの自己負担の上限額引き上げを巡り、再検討する方向で調整に入った。引き上げの見送りを含め、具体的な負担軽減策については引き続き政府・与党内で協議している。

 石破首相が近く患者団体と面会し、見直し策を伝えたい考えだ。ただ、上限引き上げを見送った場合、2025年度予算案の再修正が必要となる可能性があるため、政府・与党内で慎重論もあり、見直しに向けて最終調整している。

複数の政府・与党関係者が明らかにした。高額療養費制度を巡る政府方針の見直しは3回目で、極めて異例だ。

 首相は7日午前の参院予算委員会で、今年8月の上限額引き上げを見送るかどうかを問われ、「きちんと患者団体の話も聞いた上で、政府として判断をする」と述べた。

 政府は、3段階の引き上げのうち、今年8月は予定通りに負担額の上限を引き上げ、26年度以降の対応を今秋までに検討する方針を示していた。

 しかし、全面凍結を求める患者団体などの反発がやまず、野党に加え、夏に参院選を控える参院自民党や公明党からも方針撤回を求める声が上がっていた。5日の参院予算委員会では、自民の佐藤正久幹事長代理が「国民の理解が得られていない」と引き上げの停止を要求。公明の谷合正明参院会長も6日の同委で「国民の声を聞いて判断してもらいたい」と政府方針の再考を求めた。

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