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2025.03.18 06:49:00

海外で流行中の「麻疹」の感染者、3月に都市部で急増…渡航歴ない人の感染が相次ぐ

 感染力が非常に強い麻疹(はしか)の感染者が、3月に入って都市部で相次いで見つかっている。どこで感染したかわからず、受診先の医療機関が対応に追われるケースも起きており、4月に開幕する大阪・関西万博を前に、専門家らは警戒を強めている。(松田俊輔、佐々木栄)

 麻疹は空気感染し、免疫を持たない人が感染すると10日程度の潜伏期間後に発熱やせき、発疹などの症状が表れ、1000人に1人が死亡するとされる。

 日本は2015年、国内に定着しているウイルスはなくなったとして、世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定された。

 しかし、その後も海外からウイルスが流入して感染するケースは相次いでいる。19年には全国で744人が感染し、10年ぶりに700人を超えた。

 コロナ禍で人の往来が激減した20年以降は沈静化し、21年、22年の全国の感染者数は1桁だったが、23年は28人、24年は45人と増加。18日に国立感染症研究所が発表した今年の感染者数(9日現在)は22人と、前週から倍増した。

 感染研によると、都道府県別では神奈川4人、兵庫4人、大阪3人、岡山2人、東京1人などとなっている。

 気になるのは、海外渡航歴のない感染者が相次いで見つかっていることだ。

 大阪府東大阪市の市立東大阪医療センターでは、10日に受診した30歳代男性が麻疹と診断された。男性はワクチン未接種で、直近3週間の渡航歴はなく、なぜ感染したか不明という。

 男性は同日午前11時半から約1時間半、院内にいたため、同センターはこの間の来院者に、31日までの健康観察を呼びかけている。

 渡航歴のない人の感染は、今月になって東京や神奈川でも出ており、いずれも診断前に病院やバスを利用していた。各自治体は、渡航歴のある人とどこかで接触していないか、調査を進めている。

 一方、海外では中東や東南アジアなどで流行しているほか、WHOは今月、欧州・中央アジアの昨年1年間の感染者数が12万7000人に上り、1997年以降で最多になったと発表。こうした状況を受けて、日本へ流入するケースが増えているとみられる。

 大阪府では4月に万博が開幕し、国内外から多数の人々が訪れるだけに、感染対策は喫緊の課題だ。

 麻疹には特効薬がなく、有効な対策はワクチンの2回接種だ。高齢者には過去の感染で免疫を持つ人が多い一方、感染経験がなく、ワクチンも未接種のため十分な免疫がない人もいる。

 本村和嗣・大阪府感染症情報センター長は「体に発疹が広がった場合は、麻疹の可能性がある。いきなり医療機関に行かず、事前に電話で相談したうえで受診してほしい」と呼びかけている。

混合ワクチンが全国的に不足

 現在、一部メーカーの出荷停止で、麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が全国的に不足している。

 現行制度では、1歳と小学校入学前に1回ずつMRワクチンの定期接種を受けることになっているが、定期接種分も十分に確保できていない状況だ。国は「子どもの定期接種が優先」としており、今月、子どもの接種期間を2年延長することを決めた。

 大人については、1990年4月1日以前に生まれた人は公費助成による定期の接種が0~1回で、2回接種できていない人が少なくない。免疫が十分あるかどうかは血液検査で分かる。接種歴は母子手帳などで確認できる。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は「近年、麻疹への警戒感が薄れ、国内の接種率が低下している。ワクチンの在庫は医療機関ごとにばらつきがあるので、接種希望者は事前に問い合わせをしてほしい」としている。

2025.03.17 19:26:01

大人よりニコチン依存になりやすい少年、たばこと聞くだけで「また吸いたくなる」…興味本位で始め抜け出せず

 昨年12月、高知市内で20歳未満の少年にたばこを販売したとして、高知県警が70歳代の女を20歳未満喫煙禁止法違反で書類送検していたことが捜査関係者への取材でわかった。県警の統計によると、昨年1年間に喫煙で補導した少年の数は延べ894人で、2年連続で増加。県警はたばこを販売する店舗などへの指導を強化し、少年たちへの教育にも力を入れている。(田中志歩)

 捜査関係者によると、書類送検されたのは、70歳代の女で、高知市内の店舗で20歳未満であると知りながら、たばこを販売した疑い。県警は2023年にも同容疑で女を書類送検し、その後も指導を続けていたが、少年への販売を繰り返したため、昨年12月、2度目の書類送検を行った。女はその後、高知簡裁から罰金刑の略式命令を受けたという。

 同法は、健康のために20歳未満をたばこの被害から守る法律で、処罰対象は販売者や提供した親権者。たばこを購入した20歳未満の人は処罰対象にならず被害側として保護される。

 県警少年課は今回の書類送検について「個別の事案には答えられない」としながらも、同法違反については「指導や取り締まりを強化しているのは事実。少年の健全育成のため、供給元を減らさなければならない」とする。

 県警の統計では、県内で昨年補導された少年1733人(前年比224人増)のうち、半数を超える894人(同227人増)が喫煙での補導。800人を超えたのは7年ぶりとなる。

 ここまで補導者数が増えた理由として、同課少年サポートセンターは、身近で喫煙している大人の影響や、コンビニ店などでたばこ購入時の年齢確認が本人によるタッチパネルの操作でできることを可能性に挙げる。

 また、近年普及した加熱式たばこやたばこ価格高騰の影響も考えられるという。以前のセンターでは補導の際にたばこを廃棄できたが、現在はその高額さから廃棄に本人や保護者の許可が必要になっている。少年たちが保護者の目を盗んで返却されたたばこを吸うなど、再発につながっている恐れがある。

 20歳未満の少年は大人よりも、喫煙によるニコチンへの依存状態になりやすいとされる。実際、同センターで指導した中にも、更生支援の中で「『たばこ』と聞くだけでまた吸いたくなるから言わないでくれ」と耳を塞ぐ子どもや、「禁煙外来に通わせようと思う」と相談にくる親もいるという。

 少年の補導や立ち直り支援を行っている同センターは、依存の危険性について知ってもらおうと、昨年は学校などで喫煙や飲酒、薬物の危険性を伝える講義を約165回実施。担当者は「興味本位で吸い始めて抜け出せなくなる少年もいる。喫煙少年の補導や更生支援とともに、啓発活動にもより力を入れていきたい」と話している。

2025.03.17 11:38:24

肌に張りもたらすコラーゲン、「作られる仕組み」ウーパールーパーで解明…化粧品開発につながる可能性

 岡山大などの研究チームは、両生類のウーパールーパーを使った実験で、肌に張りや弾力をもたらすコラーゲンが皮膚の表側に存在する「表皮細胞」で作られていたことを確認したと発表した。ニワトリやマウスにも同様の仕組みがあるとみられ、人の細胞で共通点が見つかれば新たな化粧品開発につながる可能性があるという。科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に論文が掲載された。

 コラーゲンはたんぱく質の一種で、皮膚の本体部分「真皮」に多く含まれる。加齢で減少するとしわやたるみの原因になる。真皮にある線維芽細胞が作ると考えられてきたが、実験が難しく詳細は不明だった。

 チームは皮膚の透明度が高い若いウーパールーパーを使い、作られた時期が異なるコラーゲンを別の色に染める実験を行った。その結果、コラーゲンは表皮細胞から真皮側に供給されていることを確認した。真皮の線維芽細胞でも作っていたが、表皮細胞が作るコラーゲンを補強する役割にとどまっていた。ゼブラフィッシュやニワトリ、マウスでも主に表皮細胞が作っている可能性が高いという。

 岡山大の佐藤伸教授(発生再生生物学)は「化粧品や医薬品開発の新たな標的になる可能性が高い。人での検証も進めたい」と話している。

  皮膚の仕組みに詳しい九州大・佐田亜衣子教授(皮膚科学)の話 「これまでの定説とは異なる驚きの結果だ。他の哺乳類、特に人の大人の皮膚でも表皮細胞がコラーゲンを作るのか、加齢で減少した時にどのような細胞が新たに作るのか、さらに調べる必要がある」

2025.03.14 11:38:49

投資会社の担当者から「女の人生狂わせたい」…女性起業家の半数超がセクハラ被害、声上げられず

 女性起業家に対するセクハラが後を絶たない。投資家から被害を受けるケースが多いが、出資してもらう立場から声を上げにくいのが実情だ。経営者である起業家をハラスメントから守る法整備を求め、被害者らで作る当事者団体は来週中にも国に要望書を提出する方針だ。(西村魁)

「我慢するしか……」

 「投資側との関係性を考えると、我慢するしかなかった」。横浜市で会社を経営する20歳代女性は、自身のセクハラ被害を振り返り、唇をかんだ。

 AI(人工知能)を活用したサービスを開発・提供する会社を設立した約2年前、投資会社の男性担当者から「起業のお祝い」と食事に誘われた。イタリア料理店で仕事の話をした後、男性は急に「女の人生を狂わせたい」「金を巻き上げて支配したい」などと発言。不快だったが、業務に支障を来さないよう言い返すことができなかった。

 知り合いの男性起業家に相談したものの、「投資してもらったんでしょ」と取り合ってもらえなかった。悩んだ女性は適応障害を発症。誠実な取引先など周囲の支えで立ち直ったが、女性は「セクハラを受けても我慢を強いられるのであれば、他の人に起業など勧められない」と感じている。

半数以上が被害

 起業や経営などに関する研究・教育機関「アイリーニ・マネジメント・スクール」(東京)は2024年、スタートアップ(新興企業)の起業家や役員ら計197人(うち女性153人)を対象に調査を実施。全体では41・1%が直近1年間にセクハラを受けたと回答し、女性起業家(105人)に絞ると52・4%に上った。

 加害者は「投資家や投資会社の担当者」が最も多く、内容としては「愛人にならないか」などの「不適切な発言や質問」が目立った。一方で、約8割が「人間関係が壊れるのが怖い」などの理由から、被害を周囲に相談していなかった。

 調査に関わった同機関の 柏野尊徳かしのたかのり さん(40)は「起業には投資家に頼らざるを得ない場合も多く、力関係が出やすい。被害者が投資打ち切りなどの報復を恐れ、泣き寝入りを強いられることも少なくない」と語る。

法整備求める

 総務省が22年に行った調査では、起業家全体のうち女性は103万人で22・3%。政府は第5次男女共同参画基本計画で、25年に女性割合を30%以上にする目標を掲げており、今後、増加する見通しだ。

 これ以上の被害を防ごうと、セクハラを受けた経験のある起業家らは昨年10月、当事者団体「スタートアップユニオン」を設立し、対策強化に向けて動き出した。

 セクハラを防ぐ法律としては現在、企業にハラスメント防止措置の実施を義務づけた男女雇用機会均等法があるが、保護対象は会社が雇用する労働者のみだ。同団体は経営者である起業家にも法的保護が必要だと訴えており、来週中にも福岡厚生労働相らに提出する要望書では、公的な相談窓口の設置など環境整備を推進するよう求めるという。

 早稲田大の水町勇一郎教授(労働法)は「人格権を侵害するハラスメントは誰に対してでも許されるものではない。起業家を直接守ることができるような実効性のある未然防止策が何より重要で、法の保護対象を広げる必要がある」と話す。

2025.03.14 11:02:42

オンラインカジノ対策、ネット強制遮断を検討…自民はカジノサイト誘導禁止へ調整

 政府・与党は、オンラインカジノを利用させないための対策強化の議論に乗り出している。総務省は、カジノサイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」などの検討を進めているほか、自民党もカジノサイトへの誘導行為を禁止する議員立法の今国会での実現を目指している。

 総務省は、通信事業者がネット利用者の接続先を調べ、特定サイトへの接続を遮断する「ブロッキング」などの抑止策について、有識者らを交えて検討を始める方針だ。2月28日の国会答弁で、同省の大村真一・電気通信事業部長は「早急に検討を開始できるように進めたい」と述べた。

 ブロッキングは、ネット利用者の同意なく通信を検知するため、電気通信事業法が禁じる「通信の秘密の侵害」につながるとの慎重論もある。ただ、ブロッキングは現在、児童ポルノサイトに対しては実施されており、政府は児童の人権侵害を防ぐための「緊急避難」の措置に該当するとの立場を取っている。オンラインカジノに適用する場合は、遮断する必要性を示す根拠や、実施の範囲などが焦点となりそうだ。

 自民党は13日、治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会などの合同会議を開き、カジノサイトに誘導するネット上の行為の規制を優先する方針を確認した。

 海外のカジノサイトを国内から利用する行為は刑法上で違法性が明確な一方、サイトに誘導する広告をSNSなどに掲載したり投稿したりする行為は必ずしも違法性が明確ではなく、「抜け穴」と指摘される。自民は、ギャンブル等依存症対策基本法を改正して禁止する方向で調整しており、各党に賛同を呼びかけ、今国会での法改正を図る構えだ。同調査会の高市早苗会長は会合で、「非常に深刻な事態で、我が国の威信をかけて解決しなければならない」と語った。

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