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2024.11.26 18:11:29

患者の「声」取り戻すAIアプリ開発、口の動きから本人そっくりに…大阪大などチーム

 病気で声を失った患者の口元の動きから話そうとしている内容を人工知能(AI)で推定し、本人そっくりの人工音声を流す「読唇アプリ」を、大阪大などの研究チームが開発した。患者の意思疎通が楽になるといい、チームは実用化を目指し、大阪大病院で患者に試験的に使ってもらうことを計画している。

 喉頭がんや下咽頭がんなどの治療では声帯を切除して声を失う場合がある。代替の発声方法として、食道の粘膜をふるわせる「食道発声」や、気管と食道の間に穴をあけて器具を取り付ける「シャント発声」などがあるが、元の声とは異なる上、習得が難しく、体への負担も大きい。

 日本語は母音が5種類しかなく、例えば「あ」と「か」では口元の動きがほぼ同じため、母音が10種類以上ある英語などより読唇が難しいとされる。

 チームの御堂義博・特任准教授らは、母音に加え、前後の音の並びによって変化する口元の動きを16種類に分類した「口形コード」という手法に着目。まず話している口元の膨大な映像と、その動きに対応するコードをAIに学習させ、口元の動きをコードに変換する手法を開発した。

 さらに別のAIを使い、コードを自然な日本語に置き換える2段階のシステムで、話そうとしている言葉を推定できるようにした。

 事前に録音した患者本人の声をもとに、人工音声でそっくりに再現するシステムも組み合わせ、アプリを完成させた。語尾が不正確になりやすいなどの課題はあるが、大半は意味が伝わる会話ができたという。

  大上研二・東海大教授(耳鼻咽喉科・ 頭頸とうけい 部外科)の話 「練習が不要で体への負担もないため、声を失ってすぐに使えるのは大きなメリットだ。より即時性を高め自然な会話に近づけられれば、患者さんにとって大きな福音になる」

2024.11.25 18:14:35

日本初のデフリンピックまで1年、選手ら受け入れへバリアフリー化急ぐ…「理解進むきっかけ」期待

 聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の日本初開催まで1年を切った。多くの競技会場を抱える東京都内には期間中、世界70~80の国・地域から耳が不自由な選手たちが多く集まる。都内の宿泊施設や競技施設では、聴覚障害に対応したバリアフリー化が進むが、手話通訳者の育成など課題も残る。(上田惇史)

来客の知らせ、照明の点滅で

 東京港に臨むホテル「グランドニッコー東京台場」(港区)の客室。インターホンが鳴ると室内と風呂場の照明が点滅を繰り返し、液晶モニターに廊下に立つ来訪者の姿が映った。広報担当の川島由美子マネジャーは「耳が聞こえなくても来客がわかるよう、光で知らせます」と説明した。

 同ホテルは昨年夏、聴覚障害者の利便性向上のため、全882客室のうち、10客室にこの点滅機能を設けた。電動で角度を調節できるベッドといすを備えるなど、宿泊客の様々な障害に対応している。

 同ホテルは、大会運営組織から外国人選手の受け入れを要請され、しゃべると言葉が表示される自動翻訳機器の導入や、従業員への手話研修を予定している。川島マネジャーは「課題は多いが、利用者のニーズに応えるのがホテルの役割。様々な想定をしながら、準備を進めたい」と話す。

高齢者の利便性向上にも

 大会の準備・運営に携わる東京都は2021年の東京パラリンピックに続き、デフリンピックを都内のバリアフリー化を進めるきっかけにしようとしている。

 今年度は、競技会場となる駒沢オリンピック公園など都有6施設で「光警報装置」の設置に着手。災害が起きると白色の光の点滅で知らせる仕組みで、来年夏までにトイレや更衣室などの天井計661か所に専用のライトを付ける。

 音声を文字に変換して目の前のディスプレーに表示する機器も、スポーツ施設や図書館など約40か所に配備した。健常者の話した内容が言語で表示され、聴覚障害者は端末で文字を打ち込み、意思疎通する。駅にも設置を進める予定で、都国際スポーツ事業部の萬屋亮・担当課長は、「聴覚障害者だけでなく、耳の遠い高齢者の利便性向上にもつながる」と話す。

少ない手話通訳者

 デフリンピックには五輪のように選手・関係者が滞在する選手村がない。来年11月の東京大会では全17の競技会場のうち、15会場が都内にあり、選手約3000人の大半は都内の宿泊施設に滞在することになる。聴覚障害のある観戦客が国内外から訪れることも予想される。

 民間施設ではそれに対応できるだけのバリアフリー化が進んでいないのが実情だ。

 都は17年度から、バリアフリー化に取り組む民間の宿泊施設に対し、改修費や備品購入費を補助しているが、聴覚障害者向けは計16件にとどまり、ここ3年間は0件だ。都内約750の宿泊事業者が加盟する都ホテル旅館生活衛生同業組合の担当者は、「外国人観光客の増加で人手不足が慢性化し、ほかのことにまで手が回らない」と話す。

 手話通訳者の確保も難題だ。手話は各国・地域で異なるため、海外の選手と意思疎通するには、共通語として「国際手話」が用いられる。使用できる人材は国内に少なく、都は昨年度から講習会受講料の補助を始め、同年度は延べ331人を支援した。担当者は「普及につなげ、大会本番でも活躍してもらいたい」とする。

低い認知度、選手意気込み

 デフリンピックの認知度は低く、都が昨年、18歳以上の都民に実施した調査では、パラリンピックを知る人が93%に上ったのに対し、デフリンピックは15%にとどまった。

 過去4大会で計19個のメダルを獲得した競泳の いばら 隆太郎選手(30)(SMBC日興証券)は、聴覚障害を理由にスポーツクラブの入会を断られた人の話をよく聞くという。「大切なのは互いを知ろうとすること。いい結果を残して注目を集め、聴覚障害への社会の理解が進むきっかけにしたい」と意気込む。

 ◆ デフリンピック =英語で「耳が聞こえない」を意味する「デフ(deaf)」とオリンピックを組み合わせた造語。1924年にパリで初めて開催され、夏季・冬季大会がそれぞれ原則4年に1度行われる。100周年の節目の大会となる東京大会は来年11月15~26日、東京、福島、静岡の1都2県の17会場で21競技が行われる。

2024.11.25 16:04:34

高濃度PFASを検出、岡山・吉備中央町が住民の血液検査を開始…公費で実施は全国初

 岡山県吉備中央町の浄水場で、人体への悪影響が懸念される化学物質「 PFAS
(ピーファス)
」が高濃度で検出されたことを受け、同町は25日、住民の血液検査を始めた。環境省によると、公費での血液検査は全国で初めて。健康への影響に関する確定的な知見はなく、結果は岡山大などが詳しく分析する。

 検査は円城浄水場から給水するエリアの住民ら約2400人のうち、希望した約800人が対象。PFASの血中濃度のほか、脂質や肝機能の状態を調べる。来年1月中に結果を通知する。検査を受けた会社員女性(47)は「体への影響が心配で検査を受けに来た。現時点で体調に変わりはないが、検査で病気などが明らかになった時には、行政に早めの対応をしてもらいたい」と話した。

 同浄水場では2020年以降、町が毎年行う水質検査で、PFASの一種である「 PFOAピーフォア 」と「 PFOSピーフォス 」が、国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノ・グラム)を大幅に上回る1400~800ナノ・グラム検出された。しかし、昨年10月に県職員が異常な数値に気付くまで、町は対策を取っていなかった。

 発生源は、同浄水場の取水場であるダムの上流にある資材置き場に、町内の企業が08年頃から保管していた使用済み活性炭の可能性が高いという。活性炭はPFASの除去にも用いられる。昨年撤去されたが、県が今年10月に行った周辺の沢の水質調査でも高濃度のPFASが検出された。町は問題発覚後に水源を変更した。

2024.11.22 15:09:46

大分市立の小・中・義務教育学校、来年度から夏休み7日間延長…熱中症対策や児童・教職員の負担軽減

 大分市教育委員会は来年度から、市立小中学校と義務教育学校の夏休みを7日間延長し、8月31日までとすることを決めた。子どもの熱中症リスクの軽減に加え、授業時数の削減による児童生徒や教職員の負担軽減が目的。これにより、夏休みは35日間から42日間となる。

 20日の市教育委員会会議で、市立学校管理規則の一部改正を承認した。市教委によると、市立校の現在の夏休みは7月21日~8月24日。ただ、近年は夏場の気温上昇が顕著で、体育の授業を別の授業に変更するといった対応を余儀なくされている学校もあったことなどから、期間の見直しを検討していた。

 また、市立校の今年度の平均授業時数は、学習指導要領が定める標準時数を小中学校ともに上回っている。このため、児童生徒や教職員の負担軽減の狙いもある。

 授業時数が足りない場合は、学校行事を見直すことで対応する。春休み(3月27日~4月7日)と冬休み(12月25日~翌年1月7日)は変更しないという。

 市教委学校教育課は「子どもの安全安心やゆとりある家庭生活につながることを期待している」としている。

2024.11.22 11:18:44

「がん免疫療法」のカギとなるたんぱく質発見、働き抑えると副作用軽減の可能性…大阪大

 「がん免疫療法」の安全性を高めるカギとなるたんぱく質を、マウスを使った実験で突き止めたと、大阪大のチームが発表した。このたんぱく質の働きを抑えれば、がんを攻撃する免疫細胞が活性化する一方、副作用は軽減できる可能性があるという。論文が22日、科学誌サイエンスに掲載される。

 免疫細胞には、ウイルスやがんを攻撃して体を病気から守る「キラーT細胞」などのほか、逆にキラーT細胞などの働きにブレーキをかけ、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」も存在する。がん免疫療法では、これらの免疫細胞に働きかけ、効果的にがんを攻撃させる複数の薬が開発されているが、全身で炎症が起きるなどの副作用が出やすいことが課題だ。

 阪大の山本雅裕教授(免疫学)らは、がんになったマウスの体内で、特にがんとの関係が深く、キラーT細胞などの攻撃からがんを守る特殊なTレグが増えることに着目。詳しく調べた結果、がんの内部の細胞が「PF4」というたんぱく質を分泌し、特殊なTレグが増えることがわかった。

 がん細胞を移植したマウスにPF4の働きを抑える薬を与えると、特殊なTレグは減少し、がんが大きくなるのも抑えた。このTレグはがん患部に集中していると考えられ、薬を与えても体重が減少するなどの強い副作用はみられなかったという。

 国立がん研究センターの西川博嘉分野長(免疫学)の話「特殊なTレグができる仕組みを突き止めたことは有意義だ。今後は人で効果があるかどうかや、がんの種類によって影響に違いがないかどうかを確かめる必要がある」

2024.11.21 13:37:51

高額療養費制度、厚労省が自己負担の上限引き上げ案を提示…現役世代の負担軽減狙い

 厚生労働省は21日午前、医療費が高額になった場合に患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」を巡り、自己負担の上限を引き上げる案を示した。具体的な引き上げ幅は盛り込まず、「一定程度の引き上げ」と明記したほか、年収に応じた区分を細分化する案も検討していく。

 社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会に提示した。厚労省は上限額を引き上げる案を部会で議論し、年末までに結論を得たい考えだ。早ければ2025年夏からの実施を見込むものの、自己負担が増える人から反発も予想される。

 高額療養費制度は、1か月あたりの自己負担の上限額を超えた場合に超過額が払い戻される仕組み。70歳以上かどうかや、年収によって区分されており、高齢者や低所得者は低く設定されている。

 現行制度は、70歳未満では五つに区分されている。これを細分化して増やすことで、支払い能力に応じた負担を求めたい考えだ。年収が低い区分の引き上げ率を抑制することも検討する。

 政府は、全ての世代が負担能力に応じて支え合う社会保障の構築を目指しており、自己負担の上限額を引き上げることで、現役世代の保険料負担を軽減する狙いがある。

 厚労省は引き上げの理由として、賃上げなどを通じて世帯収入が増加していることや、物価上昇が続く中、現役世代を中心に負担軽減を求める声が多いことを挙げている。

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