NEWS

2024.12.02 13:22:05

きょうマイナ保険証に「一本化」、従来型も最長1年有効

 現行の健康保険証は2日に新規発行が停止され、マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」に原則として移行する。混乱を回避するため、従来の保険証は2025年12月1日までの最長1年間使用できる。マイナ保険証の利用は低迷しており、円滑な移行には今後、利用の促進をどこまで図ることができるかが課題となる。

 マイナ保険証の利用登録は、10月時点で7747万人が手続きを済ませている。全国の医療機関や薬局の92%(9月時点)がマイナ保険証に対応する。

 従来の保険証の使用は、市区町村が運営する国民健康保険と後期高齢者医療保険では来夏までが基本で、会社員らが入る健康保険組合や全国健康保険協会は最長の1年間になる。

 従来の保険証の期限切れ前に、マイナ保険証を持っていない人や、マイナカードを保険証として利用登録していない人には、申請しなくても健保組合などから「資格確認書」が交付される。病院で提示すれば、従来の保険証と同じように保険診療を受けられる。

 マイナ保険証を使った場合、本人が同意すれば、医師は病院の受診歴や処方薬の履歴を確認できる。従来は新規加入や転居・転職時に新たに保険証を発行してもらう必要があったが、マイナ保険証は継続して利用できるメリットもある。

 ただ、他人の情報がひも付けられたトラブルなどの影響で、マイナ保険証の利用率は10月時点で15%にとどまっている。高齢者を中心に不安を抱く人が多く、政府は国民の不安 払拭ふっしょく に向け、利便性の理解につながる情報提供に力を入れる方針だ。

2024.11.29 12:26:50

マイナ保険証利用の患者、電子カルテを病院間で共有へ…病歴や検査結果も把握可能に

 政府は、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用する患者の電子カルテ情報について、医療機関同士で共有する新システムの運用を、2025年度に始める方針を固めた。既存のシステムでは確認できない過去の検査結果など詳細な情報を把握できるようになる。医療の安全性の向上や効率化につなげる狙いがある。

 新システムは「電子カルテ情報共有サービス」で、厚生労働省所管の法人が管理する。各医療機関から、電子カルテに記録された病名やアレルギー、感染症と生活習慣病の検査や健診結果、処方薬の情報が集まり、データベースに蓄積される。データの保存期間は3か月~5年間となる。全国の医療機関がデータを閲覧するためには、患者の同意を得る必要がある。

 新システムの導入で、救急患者の症状と、データをつきあわせて診断したり、初診患者の検査結果を、過去の数値と比べて病状の変化をみたりすることが可能になる。アレルギー情報は、安全な薬の処方に役立つ。

 医療機関がシステムを通じて、別の医療機関に紹介状を送る機能も備える。患者が紹介状を入手する手間が不要となる。

 現在、マイナ保険証で受診する患者については、同意した上で、過去の受診歴や処方薬などの情報を確認できる別のシステムがある。ただ、何の検査を受けたかはわかっても、結果はわからないなど得られる情報は限られている。

 医療機関が新システムに接続するためには、電子カルテの改修が必要となる。厚労省は運用に向けて、改修費の一部を補助している。25年初めから全国10か所で実証事業を行い、安全で有効な使い方や課題を検証。同年度中の本格稼働を目指す。

 政府は、マイナ保険証の利用を基本とする仕組みへの移行を進めており、来月2日、現行の健康保険証の新規発行を停止する。医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は10月時点で2割弱と低調で、利用促進が課題となっている。

2024.11.28 17:51:46

ドラッグロス解消へ新薬スピード承認…がんや難病などで新制度導入の方針

 厚生労働省は、がんや難病などの患者に薬を迅速に届けるため、効果が予測できる段階で製造販売を承認する新制度を導入する方針を決めた。承認後に効果が確認できない場合は取り消しを可能とする。欧米で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」の解消策で、来年の通常国会に医薬品医療機器法の改正案の提出を目指す。

 製薬企業が承認を得るためには通常、3段階の臨床試験(治験)を実施し、薬の安全性や効果を確認する。その上で、国に承認申請を行う。

 新制度は、命に関わる重い病気や、有効な治療がない、患者が少なく臨床試験に時間がかかるなどのケースが対象となる。中間段階までのデータで効果を予測でき、患者が使う利点が大きいと判断された場合に承認する。安全対策のため、必要に応じて薬を処方できる医療機関や医師の条件を定める。

 承認後は原則、最終段階の試験の実施を製薬企業に求める。効果が確認できなかった場合は承認を取り消せる仕組みとする。

 米国には、新制度と同様の承認取り消しが可能な迅速承認の仕組みが導入されている。

 厚労省は2017年、重い病気の新薬などについて、中間段階までのデータで効果が確認できれば、最終段階の試験を経ずに早期に承認する制度を設けた。

 だが、製薬企業にとって条件のハードルはなお高い。これまでの適用は、がんや難病の治療で使われる5品目に限られており、厚労省は、新たな制度の導入が必要と判断した。

 ドラッグロスは深刻化している。厚労省によると、欧米で承認済みだが、日本で未開発の薬が23年3月時点で86品目に上る。政府は今年7月に策定した創薬力強化に向けた工程表で、86品目のうち必要性の高い薬について、臨床試験を26年度までに始めるとする目標を盛り込んだ。

 新制度が実現すれば、ドラッグロスが生じている薬の開発が日本で進みやすくなるほか、新たなドラッグロスの発生を防ぐ効果も期待される。

2024.11.28 16:37:10

下水の新型コロナウイルス調査、予算1・7倍要求で範囲拡大…1週間後の流行を予測

 下水に含まれる新型コロナウイルスを調べる事業について、厚生労働省は2025年度、調査地点を拡大する。流行状況の把握の精度を高めるのが狙いだ。欧米では下水の病原体調査が広く普及しており、専門家は「新たな感染症の危機に備え、日本でも調査体制の充実を図るべきだ」と指摘している。

 ウイルスは感染者の排せつ物にも含まれる。そこで下水に含まれるウイルスの濃度を分析して、下水処理場のある地域の感染状況との相関関係を把握することを目的に、厚労省が今年度から調査を始めた。現在13都県17か所の下水処理場で実施している。約1週間後の新型コロナの流行状況を予測できることも分かってきたため、調査地点を増やすことにした。他の感染症の調査事業も含めた予算を、今年度の1・4億円から25年度の概算要求では1・7倍となる2・4億円を計上した。今後、下水調査に協力する自治体を募る。

 海外では下水調査が広く行われている。米国で少なくとも1500か所、欧州で約30か国1700か所で実施され、対象も新型コロナ以外にインフルエンザなど複数の病原体を調査している。

 北島正章・東京大特任教授(下水疫学)によると、全国200か所で調査を行えば、人口の3分の1、約4000万人の範囲をカバーできるとし、「下水から新型コロナ以外の病原体も広く調べられる体制を整えるべきだ」と訴えている。

2024.11.27 16:54:54

肥満だと肝臓や大腸がんの危険性アップ、女性は乳がんのリスク高める…徳島大助教

 肥満や代謝の異常が日本人のがんリスクを高めているとの研究結果を、徳島大大学院医歯薬学研究部の渡辺毅助教(39)が26日、発表した。日本人を対象にした大規模な疫学調査データを活用。部位別では、肥満の人は肝臓や大腸のがんリスクが高くなり、高血糖などの代謝異常があると正常体重でも 膵臓(すいぞう) がんにかかる危険性がアップすると分析した。

 渡辺助教は徳島大を含む全国の大学やがんセンターが集めた患者ら約5万3000人の疫学調査の結果を解析した。肥満の人は肝臓がんにかかるリスクが139%増、大腸がんが41%増。さらに高血糖、脂質異常、高血圧のうち一つ以上あると代謝異常とし、全がんでリスクが15%増えるとした。

 また女性では、肥満が乳がんのリスクを45%高め、代謝異常が加わると63%増にアップ、子宮体がんも95%増えるとした。男女とも健康体重では、代謝異常がある場合のみ、膵臓がんの危険性が60%増えると分析した。

 徳島大で記者会見した渡辺助教は「これまで欧州では肥満の人の有病率は低いとされてきたが、日本人には肥満の影響が大きいことがわかった。自分がどのがんになりやすいかを知り、食事を改め、運動するといった生活習慣の改善で予防を」と呼びかけた。

2024.11.26 18:41:34

田中耕一さん「ノーベル賞より感慨深い」…開発に携わった質量分析計が「マイルストーン」認定

 2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所(京都市中京区)の田中耕一・エグゼクティブ・リサーチフェロー(65)らが開発に携わった同社の質量分析計「LAMS―50K」が、社会の進歩に貢献した製品などに贈られる「米国電気電子学会(IEEE)」の「マイルストーン」に選ばれた。田中さんら開発者は15日に本社で開かれた記念式典に集まり、喜びを見せた。(矢沢寛茂)

 IEEE(アイ・トリプルイー)は電気・電子技術分野の世界最大の専門家組織。誕生から25年以上経過した製品や技術を対象に、マイルストーンを認定している。日本では過去に、シャープの「電卓」などが選ばれている。

 島津製作所の質量分析計は、田中さんのノーベル化学賞受賞につながった技術を応用し、1988年に発売された。田中さんは、たんぱく質などの巨大分子を壊さずにレーザーを当ててイオン化し、質量を測定する手法を開発。その後、質量分析計の活用と開発が世界中で進み、現在の生物学や医学に欠かせない装置となっている。

 「ノーベル賞の時より感慨深かったかもしれない」。式典の前に開かれた記者会見で、田中さんはそう喜びを表現した。

 「ノーベル賞は夢にも描けない名誉だったが、私だけの評価はアンフェアとも思っていた。今回の認定で私を含めた5人で開発、達成した意義などを紹介できる機会をいただいた」と述べ、開発チーム全体の功績であることを強調した。

 さらに、かつて東北大工学部電気工学科でアンテナ工学を専攻したことに触れ、当時の教科書や開発当時の電子回路の基板を手に「大学にも恩返しができた」と笑顔を見せた。

 記念式典では、田中さんは開発者仲間の吉田多見男さん、吉田佳一さん、秋田智史さん、井戸豊さんと一緒にIEEEから同社に贈られた銘板を囲み、記念撮影した。

 田中さんと入社同期(1983年)の山本靖則社長(65)は「ノーベル賞の時は本当にびっくりした。あの熱気を覚えている。長い時間を経て、チームで作り上げた革新的な製品が認定され、格別の喜びだ。改めて敬意を表したい」とたたえた。

23

投稿はありません