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2024.12.16 12:25:15

介護職員の不足深刻化、東南アジアで人材獲得を強化…現地での採用活動費に一部補助

 厚生労働省は来年度、深刻な介護職員の不足を受け、東南アジアで介護人材の獲得を強化する。日本の介護事業者が現地で採用活動を行う経費の一部を補助し、インドネシアでは介護の教育プログラムの創設に着手する。高齢化の進展で介護が必要な高齢者が増えるため、外国人材の受け入れに戦略的に取り組む必要があると判断した。

 出入国在留管理庁によると、介護の仕事に就くために、在留資格「特定技能」で入国した外国人は2万8400人(2023年末時点)で、政府目標の5割強にとどまる。先進国を中心に高齢化が進む中、国際的な福祉人材の獲得競争が起きていることが背景にある。

 厚労省の獲得強化策の一つは、特別養護老人ホーム(特養)を運営する法人や介護福祉士を養成する専門学校などを対象にした渡航費の補助だ。ベトナムやミャンマーなど東南アジア各国の日本語学校や「送り出し機関」を訪問し、勉強や研修をしている若者らを対象に、日本の介護現場の魅力や待遇を伝える説明会を開いたり、面接などの採用活動を行ったりする費用に充てられる。

 1法人あたりの補助額は国と都道府県から計100万円。厚労省は来年度、最大約100事業所の参加を見込む。今年度補正予算案に関連経費を盛り込んだ。

 公益財団法人「介護労働安定センター」(東京)の23年度調査によると、特養など6割の介護事業所が職員の不足感を訴える一方、外国人材を受け入れたのは1割だ。厚労省は「外国人材の採用に一歩を踏み出す後押しをしたい」(福祉人材確保対策室)とする。

 また、海外への人材送り出しに意欲的なインドネシアでは、来年度から3年をかけ、介護技術の教育プログラム「KAIGO」を策定する。厚労省と国際協力機構から、日本の介護保険制度や高齢者ケアの専門家ら計3人を派遣する準備を進めている。

 KAIGOは、現地の公的な看護師養成校で学ぶ若者らが対象で、指導教員も養成する。ドイツなどは人材確保に向け、すでにインドネシアで動き出しているという。

 海外からの介護人材は介護福祉士の資格試験に合格すると日本で働き続けることができる。日本大学の塚田典子教授(社会老年学)は「国は資格取得を費用面で後押しし、働きやすい職場作りに力を入れるべきだ。賃上げなどの処遇改善を進め、外国人にも魅力のある業界にする必要がある」と指摘する。

 ◆ 介護職員の不足 =来年、日本の総人口の約5人に1人が75歳以上になり、介護ニーズが急速に高まる。介護職員は2022年度に約215万人いるが、26年度に約25万人、40年度には約57万人が不足すると推計されている。

2024.12.13 20:04:17

今年の科学10大ニュースに高知大などの研究…藻類「窒素固定」機能の発見

 【ワシントン=冨山優介】科学誌サイエンスは今年の科学10大ニュースの一つに、藻類が窒素をアンモニアに変換する「窒素固定」の機能を持つことを発見した、高知大など日米研究チームの成果を選んだ。

 チームは4月、藻類の一部は、窒素固定ができる特殊な細胞内小器官「ニトロプラスト」を持つことを同誌で発表。動植物を含む真核生物で窒素固定ができることを初めて明らかにした。

 大気に多く含まれる窒素は化学反応しにくい性質を持つが、一部の微生物は窒素固定ができ、化学反応しやすい窒素化合物に変換する。窒素化合物の中でもアンモニアは土を肥やす重要な成分で、同誌は「ニトロプラストを持ち、豊かに育つ作物が生まれる可能性を示唆する」と講評した。

 チームの萩野恭子・高知大特任講師(微古生物学)(52)は「自然科学の前進に役立ったという評価をうれしく思う。今後、藻類とニトロプラストがどのように進化したのか、その過程を調べたい」と話した。

 今年の最も優れた研究成果「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」には、臨床試験でHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染を予防する高い効果を示した薬レナカパビルを選んだ。

2024.12.12 11:04:25

膵臓がんの早期発見へ、尿をAI解析…大学発のベンチャーが3年後の承認目指す

 尿に含まれる微小物質・マイクロRNAのデータをAI(人工知能)で解析することで、 膵臓(すいぞう) がんを高い精度で検出できたとする研究成果を、慶応大や名古屋大発のベンチャー企業「Craif(クライフ)」などのチームが発表した。クライフは、この仕組みを応用した検査キットについて3年後の製造販売の承認を目指し、臨床試験を進めている。論文が国際医学誌に掲載された。

 マイクロRNAは遺伝物質の断片で、がん細胞があると種類や量が変わるとされる。論文によると、膵臓がん患者と健康な人計462人分の尿を冷凍して集め、抽出したマイクロRNAの違いをAIに学習させて解析した。集めた尿のうち患者か健康の人かを伏せたグループで検証させたところ、77・8%の確率でがんを見つけることができ、がんではない人を正しく判定する確率は95・7%だった。

 現在の膵臓がんの検査では、がん細胞で多く作られるたんぱく質「腫瘍マーカー」が血液に含まれていないかを調べている。だが、早期のがんほど検出されにくい。臨床試験では、早期の患者や膵臓がんリスクの高い慢性 膵炎すいえん 、糖尿病の患者ら計800人から冷凍した尿を集め、腫瘍マーカーを上回る精度があるか検証する。

 マイクロRNAに詳しい落谷孝広・東京医科大特任教授の話「採血を要しない検査方法を確立できる可能性が示されたことは意義があるが、さらなる検証が必要だ」

2024.12.12 10:32:18

東京都が第1子保育料を無償化へ、来年9月から…小池百合子知事が表明

 東京都議会第4回定例会は10日、主要会派による代表質問が行われた。小池知事は都内在住の全世帯を対象に、来年9月から0~2歳の第1子保育料を無償化する方針を表明した。こども家庭庁によると、都道府県では初。今年7月の知事選での目玉公約を実行することになり、都内の子育て環境の充実を推進していく考えを改めて示した。

 第1子保育料は、国が3~5歳は全世帯、0~2歳は所得制限を設けて無償化している。都によると、新たな制度は、国の無償化の対象外となっている世帯について保育料負担をなくす。公立は都と区市町村が半額ずつ、私立は都が全額負担する方向で、今後、区市町村などと協議する。

 都は所得制限のない保育料の完全無償化を段階的に進めてきた。2019年10月に第3子以降、昨年10月に第2子で実現した。

 今回の制度がスタートすると、都内で子育てする家庭では、子どもの人数や所得にかかわらず、保育料の負担がなくなる。答弁に立った小池知事は、「少子化対策は一刻の猶予もない。手を緩めず、取り組みを進める」と意義を強調した。

 このほか都は、来年4月1日に防止条例が施行されるカスタマーハラスメント対策で、中小企業への支援を明らかにした。

 中小は大企業と比べ、相対的に経営体力が弱い。企業規模にかかわらず対策を取れるようにするため、予防や検証に効果がある録音・録画機器などを導入した中小に金銭支援を検討する。

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