NEWS

2024.12.11 17:38:15

大阪城天守閣への石段42段、車いす担ぐサービス好評…エレベーター改修工事で

 大阪屈指の観光名所・大阪城(大阪市中央区)で、天守閣へのエレベーターの改修工事に伴い、車いすの利用者を人力で担ぎ上げ、石段を上るサービスが行われている。訪日外国人客にも好評だという。(土谷武嗣)

 1931年に再建された天守閣の前には42段の石段があり、車いすの利用者向けに97年にエレベーター1基が設置された。老朽化で改修工事をすることになり、天守閣を所有する大阪市が対策を検討。一帯は国特別史跡に指定されているため、スロープの設置が難しいことなどから、人力で担ぎ上げることにした。

 大阪城の指定管理者が事業者を公募し、障害者支援に取り組むNPO法人「ちゅうぶ」(同市東住吉区)が選ばれた。委託費は40日間で約370万円。

 工事が始まった11月5日から毎日、スタッフら6~4人が車いすを担ぎ上げ、バランスに注意しながら石段を数分で上り下りしている。利用は多い日で1日15人ほどになるといい、これまでに200人以上の登城を支援してきた。利用者の大半が訪日外国人客だという。

 オーストラリアから家族で訪れたリチャード・グローバーさん(57)は「サポートがなければ、せっかく天守閣まで来たのに帰るところだった。おかげで、展示された武具や最上階からの景色を楽しむことができた」と喜んでいた。

 NPO法人事務局長の石田義典さん(65)は「せっかくの大阪旅行で、『障害者だからあきらめないといけない』という悲しい思いをしてほしくない」と話した。

 改修工事が終わる今月14日まで無料で実施している。予約不要で、石段下の受付で申し出る。天守閣内には、エレベーターが2基備えられている。

2024.12.10 16:02:16

ヘリ・飛行機の「洋上救急」一度の出動で7時間…医師・看護師・救急救命士の38人が訓練で備え

 航行中の船舶で発生した傷病者を、医師らが乗った海上保安庁などのヘリコプターや飛行機で搬送する「洋上救急」の訓練が10日、海保羽田航空基地(東京都大田区)で行われた。医師・看護師と、今年から新たに出動対象となった救急救命士を加えた7医療機関の38人が参加した。

 制度は1985年10月に始まり、今年11月末までに海保と自衛隊の航空機による救助件数は全国で1004件、1037人に上る。日本最南端・沖ノ鳥島や最東端・南鳥島より遠い海域もカバーしており、いったん出動すると、医療従事者が勤務先に戻るまでに平均7時間以上を要する。

 参加者はこの日、羽田基地でヘリに乗り込み、海保の機動救難士と一緒に心肺蘇生や点滴、気管挿管などの手順を確認。ヘリや飛行機に搭載されている救助資機材の点検なども行った。午後には駐機場でヘリのエンジンを起動して騒音の度合いを体感しながら、ヘッドセットを通じた意思疎通を練習する。

 同僚の看護師らと参加した日本医科大学付属病院・高度救命救急センターの下西颯医師(28)は「思ったよりスペースが狭く、普段と違って座りながらの処置になるが、傷病者とのポジショニング(位置取り)を含め、あらかじめ確認できてよかった」と話していた。

2024.12.09 19:06:10

「マイナ保険証」で救急患者の医療情報、病院が同意なしで閲覧可能に

 厚生労働省は9日、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用し、意識不明に陥った救急患者らの医療情報を、本人の同意なしに病院が閲覧できるシステムの運用を始めた。処方薬や手術歴などを救急医らが把握し、的確で迅速な治療につなげることで、救命率の向上や後遺症の軽減を目指す。

 現在、マイナ保険証で受診する患者が同意すれば、過去5年間の受診歴や処方薬、特定健診の結果を医療機関は閲覧できる。これらの医療情報は、レセプト(診療報酬明細書)などのデータを活用している。

 新システムでは、意識不明や会話が困難などで意思確認ができない場合、医師が救命や回復のために必要と判断すれば、本人の同意なしに情報を閲覧できる。

 救急用にまとめた情報も確認できる。直近3か月に限定した受診歴や薬の情報などで、関係学会の助言を得て厚労省が絞り込んだ。

 医師は新システムの導入で、患者の医療情報を速やかに把握できる。例えば、血を固まりにくくする抗血栓薬の使用がわかれば、出血しやすい点に注意して治療を進められる。

 厚労省は2025年度、マイナ保険証を利用する患者の電子カルテ情報を、医療機関同士で共有する仕組みを導入する方針だ。導入後は、アレルギーの有無や感染症の検査結果も、新システムで閲覧できる。

 厚労省によると医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は今年10月時点で15・67%にとどまっている。

2024.12.05 15:01:48

移植希望者が施設を「複数」登録できる仕組みを今年度中に整備へ、厚労省が体制改革案を了承

 脳死者から提供された臓器を移植する施設が人員や病床の不足などで臓器の受け入れを断念している問題を巡り、厚生労働省の臓器移植委員会は5日午前、移植医療体制の改革案を了承した。移植希望者が移植を受ける施設を複数登録できる仕組みを今年度中に整備するほか、日本臓器移植ネットワーク(JOT)から臓器あっせん業務の一部を地域ごとに置く新設法人に移行する。

脳死下の臓器提供数の増加に伴い、移植施設の受け入れ態勢の 逼迫ひっぱく や、JOTの対応の遅れが指摘され、同委員会が包括的な改革の議論を7月から行ってきた。移植医療体制の抜本的な改革は、1997年の臓器移植法施行後初となる。

 移植施設の臓器受け入れ断念問題への対策として、移植希望者がJOTに登録できる施設数を現在の原則1か所から複数にする。施設を選ぶ手がかりにしてもらうため、施設ごとの待機患者数や移植実施数なども公表する。移植後の患者の生存率といった移植成績に関する情報については、関連学会で検討を進めるとして結論を持ち越した。

 臓器のあっせん業務を単独で担っているJOTから、臓器提供者(ドナー)家族への臓器提供についての説明や同意取得などを切り離し、臓器提供施設により近い法人に委ねる。委員からは「あっせん業務をスムーズに移行するための司令塔が必要」などの意見が出た。

 臓器提供の経験が浅い施設を支援する拠点施設を大阪府や北関東、甲信越などに設置する。

 また、厚労省は同日、9月に公表した臓器受け入れ断念の実態調査結果について集計を見直し、2023年に院内態勢が整わないことを理由として臓器の受け入れを断念したのは25施設から26施設に、移植が見送られた患者数は、のべ509人から803人に訂正すると発表した。

21

投稿はありません