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2024.12.18 09:48:00

「子どもの介護」でも休業取得しやすく…厚生労働省が来年度からの基準改定へ

 厚生労働省は、企業などが従業員の介護休業を認定する際に使う「判断基準」に、子どもの介護も対象だと明記する方針を固めた。現行の基準は高齢者介護を前提としており、日常的に医療行為が必要な「医療的ケア児」や障害児を育てる労働者から、申請しづらいとの声が相次いでいた。来年度からの運用を目指す。

 介護休業は2週間以上、常に介護を必要とする家族がいる場合、1人につき最大93日取得できる。1995年に始まった制度で、高齢化が進む中、家族の面倒を見るために仕事を辞める「介護離職」が問題となって導入された経緯がある。

 このため、高齢者介護を念頭に置いている。休業が必要なほどの介護状態であるかを見極めるため、厚労省が定めた判断基準の中には、「認知症高齢者等」との記載は出てくるが、子どもに関する文言はない。

 現行の基準では「歩行」「排せつ」など12項目に、できないことがあるなど一定程度該当するか、要介護2以上である場合、休業が認められる。対象が子どもであっても、基準を満たせば取得は可能だ。

 だが、労働者側からは「子どもに関する記載がないため、申請しにくい」、企業側からは「認めていいのかどうか、悩ましい」といった意見が国や自治体に寄せられていた。

 20歳未満の医療的ケア児は、医療技術の進歩によって救える命が増えたことで増加。2008年に1万人を超え、23年は約2万人と推計されている。身体障害や知的障害を持つ18歳未満も37万人超に上る。

 厚労省は年内に有識者研究会を発足させ、障害児らを育てる当事者や企業からヒアリングを行って基準の見直し案を検討する。新基準には子どもの介護も対象だと明示する方針という。

 厚労省の約6300事業所を対象にした調査では、22年度に介護休業を取得した従業員の割合は、0・06%。来年4月に改正育児・介護休業法が施行され、企業には40歳前後の社員への介護休業制度の周知が義務づけられる。障害児や医療的ケア児を育てる労働者への配慮義務も企業に課され、仕事と育児・介護との両立支援が広がる見通しだ。

2024.12.17 19:57:30

AIロボと人類の「共生」体験…自然な会話、「喜び」「驚き」の表情も

万博考 祭典の意義〈5〉

 「お酒はいつも何を飲みますか」。人型のロボットが話しかけてくる。理化学研究所が開発中の「ニコラ」だ。開発チームを率いる美濃導彦さん(68)が「ワインが好き。飲んでみたら」と返すと、ニコラは「私はどうもアルコールのにおいが苦手みたいです」と眉をひそめた。

 ニコラは人工知能(AI)を搭載し、自然な会話ができる。相手の表情や話の内容に応じて、「喜び」「驚き」といった表情も作り出せる。空気圧モーターがシリコーン製の皮膚を動かし、まばたきもお手の物だ。

 目指すは「人間のように自律し、人間を支えるロボット」。現在は機能別に開発を進めており、大阪・関西万博では、対話に特化したニコラのほか、自律的に動き回る「インディ」、人に装着して動作を補助する「エアトロ」を披露する。

 美濃さんは「人に寄り添うロボットがいれば、心の安らぎが得られ、年を取って一人になっても楽しく生きられる。万博ではそんな2050年の姿をイメージしてもらいたい」と話す。

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 近年のAIの進化は、ロボットの性能を飛躍的に高めつつある。「未来社会の実験場」を目指す万博には、最先端のAIを備えたロボットが数多く出展される。

 大阪大の石黒浩教授がプロデュースするテーマ館ではロボット約50体が展示され、ロボットに囲まれて暮らす未来社会が体感できる。石黒教授は「ロボットやAI、(分身として遠隔操作できる)アバターが当たり前になった50年後の姿を示したい」と語る。

 一方で、AIは人類の脅威にもなりうる。AIが人の能力を超える「シンギュラリティー」が45年に訪れるという予測もあり、欧州連合(EU)を中心にAIを規制する動きが強まっている。理研の美濃さんは「人の感情を読み取るロボットが、欧州の規制下で許されるのか。万博ではそうした議論も期待したい」と語る。

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 AIの普及は、日本のものづくりの復権につながる可能性もある。AI研究の第一人者として知られる東京大の松尾豊教授(49)は「日本はAI開発で遅れたが、ロボットの駆動技術は強い。生成AIによるロボットの柔軟な制御が実現できれば、日本は新しい市場を獲得できる」と指摘する。

 立命館大発の新興企業「人機一体」(滋賀県草津市)は人型の作業ロボットを展示する。すぐそばで操縦 かん を握る人の手に、ロボットが持った物の重みや反発が瞬時に伝わってくるのが特長。危険な高所や建設現場での活用を想定し、30年代の実用化を目指す。

 AIを活用すれば操縦者の負担が減り、より使いやすいロボットが実現する。金岡博士社長は言う。「日本がロボット工学技術で先頭を走り続けることをアピールしたい」

(大阪経済部 高市由希帆、都築建、おわり)

2024.12.17 06:37:47

国立がん研究センターに京都大が新拠点、治験開始までの準備を半年以上短縮へ…免疫療法を計画

 画期的ながん治療法の開発を目指し、京都大は来年4月、国立がん研究センター(東京都中央区)内に新拠点を開設する。京大の最先端の基礎研究の成果を、国内で最もがん治療の実績が豊富な同センターで活用し、治験を加速させる狙い。同センター内に大学の出先機関ができるのは初となる。(編集委員 今津博文)

 京大は、がん免疫療法の開発に貢献した 本庶佑ほんじょたすく 特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞するなど、基礎研究に定評がある。こうした成果の実用化を促すため、2020年4月、本庶氏をトップとする「がん免疫総合研究センター」を設立するなど、がん治療の進歩に注力している。

 だが、学内の京大病院はがん治療に特化した病院ではなく、単独で治験を行う場合、患者の募集や企業など関係機関との調整に時間を要し、治験開始まで1年以上かかるのが課題だ。

 一方、国立がん研究センターでは、治験開始までの準備を半年以内に完結し、スムーズに患者を募集するノウハウが確立。患者から採取したがん組織や血液などの検体、臨床データを多数保有し、研究段階の治療法の有効性を事前に調べる体制も整っている。

 日本が世界のがん治療をリードするには、基礎研究の成果を迅速に治験につなげる必要がある。そこで京大と同センターは来年4月、共同治験の実施拠点として、京大の研究室を同センター内に開設することを決めた。

 同センターの間野博行・研究所長が京大の客員教授を兼任。今後は、京大が構想する新規のがん免疫療法の治験を同センターと共同実施することを計画している。また、同センターの医師が新拠点で学び、京大の学位を得ることも可能だ。

 拠点の責任者を務める西川博嘉・京大教授は「米国の主要ながん研究センターは、大学と一体化して成果を上げている。今回の連携で、国内でも世界トップレベルの体制を整えたい」と意気込む。

2024.12.16 15:14:20

シルバー人材センターに「アシストスーツ」…体力衰え理由の退会防ぐ、厚労省がモデル事業

 厚生労働省は、足腰などを補助して負担を軽減する「アシストスーツ」をシルバー人材センターの高齢者に貸与するモデル事業を実施する方針を固めた。体力面で不安を抱える高齢者が働き続けられるように支援する狙いで、モデル事業の成果や課題を全国のセンターに周知し、アシストスーツの活用を促したい考えだ。

モデル事業は2025年から全国20か所程度で実施する。厚労省は今年度の補正予算案に関連経費1億9000万円を計上した。

 アシストスーツは、モーターなどが駆動する力で重い物を持ち上げるのを助ける電動型のほか、ゴムの伸縮などを利用して腰や腕を支えてくれる簡易なタイプもある。人材センターでは庭木の枝切りや農作業、地域によっては雪かきなどの作業を請け負っている。高齢者には腰などへの負担が重い作業もあり、課題となっていた。センターを退会する高齢者の多くは、体力の衰えを理由に挙げているという。

 同省によると、アシストスーツを導入しているセンターはまだ少ない。1台で数万から100万円程度かかる調達費用が問題になるほか、まだ使いやすさが知られていないことが背景にあるという。

 同省は貸与によるモデル事業を実施することで、スーツについて広く知ってもらうことを目指している。実際にアシストスーツを使った高齢者の意見を踏まえてどういった作業に使えるのかも検証する。

 65歳以上の就業者数は914万人(23年)で、20年連続で前年を上回っている。政府は今年9月に閣議決定した高齢社会対策大綱で、年齢にかかわらず希望に応じて働ける環境を整備するとしている。

◆シルバー人材センター =地域の家庭や企業、官公庁から仕事を受注し、定年退職者らの高齢者の会員に依頼する。会員は全国に67万人(男性44万人、女性23万人)おり、平均年齢は74・8歳。

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