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2024.12.26 18:36:00

「先生に怒られる」と渋々着けたヘルメット、少年の命つなぐ…自転車での着用は高校生に浸透せず

 福岡県教育委員会は25日、来年4月から、自転車で通学する県立学校生徒のヘルメット着用を義務化すると発表した。

 発表では、各校の校則などで自転車通学の要件として盛り込む。県内では全ての県立高校で自転車通学が可能で、今年度は6割にあたる約3万9000人が自転車で通学している。

 自転車のヘルメット着用は昨年4月施行の改正道路交通法で努力義務になったが、特に高校生に浸透していない。県警による今年7月の着用率調査では、県内平均の12・8%に対し、高校生は年代別で最低の8・1%。今年7~9月に県内で発生した高校生の自転車乗車中の事故の約5割(58件)が登下校中だったという。

 自転車通学時の事故で、実際にヘルメットによって一命を取り留めた福岡市内の少年が取材に応じ、着用の重要性について語った。(岡林嵩介)

 「着けていなければ死んでいたかもしれない」。少年(16)は当時をこう振り返る。中学3年だった昨年9月、福岡市内を自転車で登校中に交差点で車と衝突。頭を強く打ち、物忘れや体の動きの鈍化など高次脳機能障害の後遺症が残った。それでも今年6月に退院し、脳の機能を鍛えるリハビリに通いながら、1年越しの高校受験に向け、勉学に励んでいる。

 通っていた中学は自転車通学時の着用を義務づけており、少年は「先生に怒られるから」と渋々着けていたことが命をつないだと痛感する。少年の母親(41)は毎朝ヘルメットのあごひもを締めたか確認しており、「かぶらせていて本当に良かった」と語る。少年は今、「着用が広がってほしい」と強く願う。

2024.12.24 18:01:10

発がん性の恐れある化学物質「PFAS」、水質基準の対象に…水道水の検査・改善が義務に

 環境省は24日、発がん性が指摘される化学物質「 PFAS(ピーファス) 」の一部について、水道事業者に水道水の検査・改善を義務付ける水道法上の「水質基準」の対象とする方針を固めた。PFASは全国各地で検出が相次ぎ、同日に開催された専門家会議から「安全管理を強化する必要がある」との意見を受け、判断した。

 PFASは水や油をはじく加工や、泡消火剤の材料などに使われてきた。国内での製造・輸入はすでに禁じられたが、分解されにくい性質から、土壌中などに残留しているとみられる。

 国は2020年、体重50キロ・グラムの人が、毎日2リットルの水を飲んでも健康に影響がない濃度として、PFASの一種「 PFOAピーフォア 」と「 PFOSピーフォス 」の合計で1リットルあたり50ナノ・グラムとする「暫定目標値」を定めた。水質管理について留意する必要はあるものの、検査などは義務づけられていなかった。

 しかし、各地の水道水や河川、井戸水から検出が相次ぎ、国は今年、水質基準への引き上げの議論を開始。水道水からの検出状況について初の全国調査を実施し、20~23年度に14事業者で暫定目標値を超える濃度が検出されていたことが明らかになった。今年度は9月末時点でゼロだったが、残留するPFASが水源を汚染するリスクはあるため、国は水質基準に引き上げ、管理を強化する必要があると判断した。

 水質基準の対象となると、自治体など水道事業者は、水道水中の濃度を調査し、基準を超過した場合は給水を止めたり、水質を改善したりする義務が生じる。環境省は来春をめどに、具体的な計画をとりまとめる。

2024.12.24 13:55:30

「がん予防」うたう再生医療で敗血症、厚労省が輝鳳会などに改善命令…法令違反や不適切な衛生管理確認

 医療法人 輝鳳(きほう) 会(東京都豊島区)が運営する医療機関で自由診療の再生医療を受けた2人が敗血症となった事案で、厚生労働省は24日、再生医療安全性確保法に基づき、輝鳳会と都内の医療機関代表2人に対し、再発防止策の策定などを求める改善命令を出した。調査では複数の法令違反や、不適切な衛生管理体制が確認されたという。

 発表などによると、輝鳳会の医療機関「THE K CLINIC」(同中央区)で今年9月30日、がんの予防をうたった再生医療で細胞の投与を受けた2人が帰宅中に緊急搬送され、集中治療室(ICU)に入院。敗血症と診断され、その後回復した。

 この医療機関では、希望者の血液から培養した免疫細胞を自分の体に戻す再生医療を提供しており、2人は同法人「池袋クリニック」(同豊島区)で別々に血液を採取されていた。血液は同法人の培養センター(同所)で、細胞の培養と処理が行われたという。

 同省は10月25日付で、培養センターでの細胞の加工などを一時停止する緊急命令を発出し、同29日から同センターなどに立ち入り調査した。その結果、2人の細胞加工物の残液から細菌が確認され、同省はいずれかの工程で混入した可能性が高いと結論づけた。

 培養センターでは、点検整備の記録の作成が行われないなど複数の法令違反があり、無菌試験の一部を目視で行うなど不適切な体制もあったという。このため同省は改善命令で、衛生管理体制の再検討や、改善計画の提出などを求めた。

  藤田医科大の八代嘉美教授(幹細胞生物学)の話 「がんの『予防』をうたう再生医療は一般的に科学的根拠に乏しい。再生医療の提供には高度な衛生管理が求められ、混入防止の教育体制や緊急時の安全確保策など、国や学会が連携して対策を考える必要がある」

2024.12.23 13:45:20

平日の日中だけ稼働「日勤救急隊」続々、全国の13%が導入…高齢化で増え続ける搬送に対応

 交代制で24時間勤務の通常の救急隊とは別に、搬送依頼が集中する平日の日中だけ稼働する「日勤救急隊」が全国の消防に広がっている。高齢化で増え続ける搬送依頼に対応し、働き方改革につなげるためだ。総務省消防庁によると、今年4月時点で全体の13%に相当する95消防本部が導入。現場到着までの時間が短縮される成果も上がっている。

 同庁によると、昨年の救急車の出動件数は過去最多の763万7967件(速報値)で、20年間で約1・5倍になった。高齢化で急な体調不良を訴える患者が増えているほか、救急車をタクシー代わりに使う患者もいて、2022年は搬送者の半数近くが入院不要の軽症だったという。

 救急車の現着所要時間も延びている。22年は前年から0・9分延び、過去最長の10・3分。20年前の6・3分から4分遅れている。また、22年で搬送最多の時間帯は午前10時~正午。午前8時から午後6時までに、搬送人員の約6割が集中していた。

 救急現場では「勤務日の朝から翌日朝まで24時間勤務に入り、その後休む」というのが一般的だが、介護や子育てなどを抱える職員もいる。日勤救急隊は、こうした職員らが忙しい日中に交代制で稼働し、全体の出動の負担を軽減させる仕組みで、全国の消防で導入が相次いでいる。

 昨年7月に導入した富山市消防局では、今年3月までに現着時間を前年比で約50秒短縮。名古屋市消防局も昨年4月に2隊を導入し、約16秒縮めた。また、21年から導入した群馬県の高崎市等広域消防局は、育休を取得した隊員の復職支援で活用する。今年4月に復帰し、日勤の隊員として働く秋山彩夏さん(29)は「復帰後も現場に出たかったのでありがたい」と話す。

 今年5月に導入した高松市消防局ではシニアが活躍。隊長の伏見忠さん(61)は20年以上の救急隊経験があり、定年延長を機に志願した。「通常勤務は体力的に厳しいが、日勤なら無理なく働ける。経験を生かして貢献できれば」と語った。

2024.12.20 14:17:38

119番すべきか病院に行くべきか、電話窓口「#7119」の相談増加…大分県が全県で運用検討

 大分市は10月から、救急車を呼ぶべきかどうか迷った時の電話相談窓口「#7119」を運用している。看護師らが症状を聞き取って対処法を助言するため、不急の119番を減らし、救急隊員の負担軽減や救急車の現場到着時間の短縮などが期待されている。2か月間ですでに約1800件の相談が寄せられており、県も来年度からの全県での運用を目指している。(池田圭太)

 #7119は、急病やけがの際に119番すべきかや病院に行くべきかを迷った時などの相談窓口。政府が全国展開を推進しており、総務省消防庁によると11月現在、31都府県が全域で実施している。大分市や名古屋市など、一部の自治体だけで運用している例もある。

 大分市は10月1日に開始。病院が開いていない時間帯の受け皿として、月~土曜は午後7時~翌日午前8時、日曜と祝日は午前8時~翌日午前8時に受け付けている。今年度の事業費は業務委託費など計1300万円で、3年以上の実務経験がある看護師がコールセンターで対応している。

 市保健所保健総務課によると、11月末までの相談件数は1785件。うち119番を勧めたのは252件、医療機関の受診を勧めたのは830件だった。残りの703件は、休日の当番医の確認や、#7119で対応していない心の病や薬の相談などだった。

 市の利用状況を踏まえ、県は来年度から全県での運用開始を目指し、各市町村の意向を確認している。

 大分市の足立信也市長は11月の定例記者会見で「119番に寄せられていた電話の受け皿として、救急車の適正利用に寄与することも考えられる」と手応えを語った。

 年末年始の今月29日~来年1月3日は24時間対応する。通話料は自己負担。市は、明らかに緊急を要する場合は迷わず119番するよう呼びかけている。

昨年の救急出動 大分市過去最多

 大分市の救急出動件数は、高齢化などの影響で増加傾向にある。市消防局によると、2023年は、過去最多だった22年を1748件上回る2万3548件だった。

 搬送人数は22年より1985人多い1万9907人。このうち病院で「軽症」と診断された患者の割合は37.8%で、2年連続で増加した。通報を受けてから現場に到着するまでの平均所要時間は8.2分だった。

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