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2025.01.28 17:22:42

視野が狭まっても自覚しにくい緑内障、「運転外来」開設相次ぐ

 眼科の専門病院や大学病院で緑内障の患者らを対象とした「運転外来」を設ける動きが出ている。緑内障の患者は視野が狭まる症状を自覚しにくい。注意せずに運転を続けると事故につながるリスクがあるため、外来では、運転時の見え方や状況判断を確認する。担当する医師チームは今年1月、「運転能力を過信する緑内障患者が多い」とする研究報告をまとめた。

 国内初の眼科の運転外来は2019年7月、西葛西・井上眼科病院(東京)が開設した。神戸市立神戸アイセンター病院と新潟大医歯学総合病院が続き、3か所に増えた。さらに名古屋市立大東部医療センターが今年4月に始める予定だ。ほかにも設置を検討する大学病院がある。

 外来は、視力や視野、認知機能など一般的な検査に加え、「ドライビングシミュレーター」という装置を使うのが特徴だ。患者は装置の運転席に座り、市街地を走行する動画を見てアクセルやブレーキを操作する。走行中の目の動きを捉え、見落とした部分が画面に表示される。

 受診するのは、40歳以上の20人に1人がかかるとされる緑内障のほか、網膜色素変性症や脳卒中など視野に障害が出る患者らだ。開設が相次ぐ背景には、こうした患者が運転リスクを自覚しにくいことがある。

 同眼科病院の国松志保副院長らが今月、国際科学誌に報告した研究では、同眼科病院と新潟大の運転外来を受診した緑内障患者227人のうち145人(64%)が、運転時の見えづらさや不安はなく「運転に問題がない」「正常に見えている」と回答。145人のうち63人は、症状が最も重い後期緑内障だった。

 視野が狭まると、車や歩行者の飛び出しに気づくのが遅れ、信号や標識を見落とすリスクがある。国松氏は「視野の変化に気づかず、視力に問題はないから安全と思い込むケースが目立つ」と指摘する。

 外来では、視野の上部が欠けた人には、信号をよく確かめるよう促し、下部が欠けた人には左右からの飛び出しへの注意を呼びかけるなど助言する。受診後の経過を追えた患者の7割が運転を続けており、国松氏は「ほとんどの人が運転時に注意するようになっており、大きな事故は起こしていない」と説明する。シミュレーターで危険性を体感したことで納得して運転をやめた患者もいるという。

 交通事故の予防医学に詳しい一杉正仁・滋賀医大教授の話「運転外来は、地域の安全を守るためにも重要な取り組みだ。緑内障をはじめ運転に支障が出る病気は多く、行政がシミュレーターの導入費を補助するなど普及を後押しすべきだ」

2025.01.27 17:34:28

自律型生活支援ロボ・盲導犬に代わる「AIスーツケース」…大阪万博のプラン最終版概要が判明

 政府が2025年大阪・関西万博でアピールする新技術や、開催に合わせて進める取り組みをまとめた行動計画「万博アクションプラン」最終版の概要が判明した。「未来社会」で活用を目指すロボットや翻訳技術、海外と自治体の国際交流事業などを盛り込んだ。政府の国際博覧会推進本部が今月中に正式決定する。

 最終版では、〈1〉未来社会の体験〈2〉日本の魅力発信〈3〉地方活性化――を3本柱とし、具体的な最新技術や13府省庁が連動して進める事業を並べた。新技術は万博内で展示するほか、来場者への応対や会場への交通手段などに使用される。

 「未来社会の体験」では、AI(人工知能)によって人間の動きを把握し、状況に応じた生活支援ができる自律型ロボットを展示するほか、会話を瞬時に30言語に翻訳するアプリをスタッフの来場者対応や会場案内、音声放送などの通訳用に幅広く使用していくとした。

 新技術としては、盲導犬に代わって視覚障害者を安全に目的地まで誘導する「AIスーツケース」の会場内での展示や、自動運転バスや空飛ぶクルマなどの会場内外での運行もこれまでに策定してきた行動計画で想定されてきたが、最終版でも採用された。

 近未来の医療体験ができる場として、世界最大級の医療・ヘルスケアの国際展示会を会場近くで開催することも新たに計画した。

 「日本の魅力発信」では、日本のアニメやマンガを紹介する「クールジャパンショーケース」を会場内で開催。「地方活性化」に向け、参加国・地域と日本全国の自治体が交流する「万博国際交流プログラム」(登録数16府県72市区町村)を実施し、地元産品の海外展開や人材交流を後押しする方針を掲げた。

 行動計画は21年12月に初版を策定し、約半年ごとに改訂してきた。4月13日の開幕を控え、今回が最終版となる。

2025.01.24 19:08:30

「年収106万円の壁」撤廃明記、改革法案の概要を厚労省が自民に提示

 厚生労働省は24日午前、通常国会に提出する年金改革関連法案の概要を自民党に提示した。パートらが厚生年金に加入する「年収106万円の壁」を巡り、年収や企業規模の要件を撤廃する。年収798万円以上(賞与を除く)の会社員らが支払う厚生年金の保険料を最大で月約9000円増額することも盛り込んだ。

 党の社会保障制度調査会に示された概要では、パートら短時間労働者が厚生年金に加入する要件のうち、「月額賃金8万8000円(年収換算約106万円)以上」の要件を関連法の公布後、3年以内に撤廃すると明記した。「従業員51人以上」の企業規模要件は、2027年10月に「21人以上」に緩和し、29年10月に廃止する。「週20時間以上」の労働時間の要件は残す。

 年収798万円以上の会社員らの厚生年金の保険料は27年9月に、現在の月5万9475円から最大で約9000円増やす。

 働く高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金」を巡っては、現在は給与と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、超過した半分の厚生年金が支給されないが、26年4月からは合計額が月62万円までは厚生年金を満額で受け取れるようになる。

 厚生年金に加入する会社員らと死別した配偶者が受け取る「遺族厚生年金」は男女の格差をなくし、18歳未満の子どもがいない場合の給付期間を男女とも原則で一律5年間とする。65歳以上で子どもがいる厚生年金受給者に一定額を加算する制度では、現在は第3子以降で加算額が減らされるが、第2子までと第3子以降の加算額を年28万1700円で一律とする。

 厚生年金の積立金を活用した国民年金(基礎年金)の底上げ策や、パートら厚生年金の保険料について会社側の負担割合を増やせる特例は次回以降の議題とし、示されなかった。

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