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2025.02.06 19:22:48

聴覚障害の「逸失利益」算定基準、健常者と「同等」…娘の告別式と同日の確定に父「導いてくれた」

 聴覚障害のある女児が重機にはねられて死亡した事故を巡り、将来得られるはずの収入「逸失利益」の算定基準が争われた訴訟で、全労働者の平均年収と同水準と判断した大阪高裁判決が5日、確定した。原告の遺族と、被告の運転手側の双方が期限までに上告しなかった。重機の運転手と当時の勤務先は遺族に約4300万円を賠償する。

 大阪府立生野聴覚支援学校小学部5年の井出 安優香あゆか さん(当時11歳)は2018年2月、大阪市生野区で下校中、歩道に突っ込んできた重機にはねられて死亡。遺族が損害賠償を求めて提訴した。

 23年2月の1審・大阪地裁判決は逸失利益について「障害が労働能力を制限することは否定できない」とし、全労働者の平均年収の85%で算定した。

 これに対し、1月20日の大阪高裁判決は全労働者の平均年収を原則とし、減額を「例外」とする判断基準を示した。その上で、井出さんのコミュニケーション能力の高さや障害を補うデジタル機器の存在を踏まえ、「減額する理由はない」と判断。賠償金を1審の約3700万円から増額した。

父「私のように苦しむ遺族が二度と出ないことを望む」

 井出さんの父、努さん(52)が5日、大阪市内で記者会見を開き、「長い時間がかかったが、やっと報われた」と語った。

 訴訟では、障害を理由とした減額を「差別的だ」と訴え続けた。「私のように苦しむ遺族が二度と出ないことを望む」と述べた。

 井出さんの告別式が営まれたのは、ちょうど7年前の2月5日。努さんは「安優香が天国に行った日。偶然ではなく、娘が導いてくれた」と涙を浮かべた。

2025.02.04 19:17:54

道路陥没から1週間、入浴施設や温水プールの利用休止相次ぐ…120万人に排水自粛要請続く

 埼玉県八潮市で発生した県道陥没事故は4日で発生から1週間。県東部などの12市町約120万人を対象とした排水自粛の要請は依然として続いている。陥没現場には、破損した下水道管から汚水が流れ込んでいるとみられ、県は、洗濯や風呂の頻度を下げるなどの協力を呼びかけている。長引く節水で、生活への影響が広がっている。

 春日部市では、高齢者福祉センターなど3か所で先月29日から入浴利用を中止している。このうち「大池憩いの家」は、1日あたり100人近くが利用する人気施設という。市には事故後、家庭の風呂使用を控えた人たちから「利用できるか」と尋ねる電話もあった。市高齢者支援課の池田裕介主幹は「要請が解除されれば、速やかに利用再開できるよう努力する」と話す。

 蓮田市でも先月29日から、市老人福祉センターの入浴施設を利用休止にした。

 越谷市民プールは先月31日から、温水プールなどの利用を休止した。同プールを昨年度に利用した人は約7万8000人。人気の施設だが、数日に1度の水の入れ替えで大量の排水があるため、休止しているという。

 家庭でも風呂などからの排水を減らしている。事故現場近くで暮らす男性(74)は、入浴を2日に1回に減らした。また使った食器類をためて、なるべく1度で洗うようにしているという。「最低限度の水を使うように心掛けている」と話す。

 一方、県東部で人工透析治療を行うクリニックは水道の使用を続けざるを得ない状況だ。腎臓の代わりに血液から老廃物を取り除く過程で大量の水が必要になる。患者約65人が週3回ほど透析を受けているという。男性スタッフは「患者の体調に直結するので、水の利用はやむを得ない」と語った。

2025.02.03 16:01:34

脳死判定から臓器摘出、経験豊富な拠点施設が医療機関をオンライン支援…厚労省がシステム配備

 厚生労働省は、脳死下の臓器提供の経験が豊富な25の拠点施設と、経験の浅い約70の医療機関をオンラインで結び、遠隔で脳死判定などを支援するシステムの配備に今年から着手した。経験が浅い医療機関は、患者家族への説明や脳死判定で対応に迷いがちだ。拠点施設の医師が状況を同時進行で確認しながら、こまめに助言することで、円滑に脳死判定を進め、臓器提供の増加につなげる狙いがある。関連経費5億2000万円を昨年12月に成立した今年度補正予算に計上した。

 厚労省によると、国内で臓器提供が可能な約900の医療機関のうち、実際に提供経験があるのは3分の1の約300にとどまっている。医療機関によっては、家族への対応や脳死判定などのノウハウが十分でなく、臓器提供の実施に後ろ向きになりがちとされる。

 こうした医療機関を支援するため、厚労省は、臓器提供を行う人員や経験が不足している約70の医療機関に、遠隔操作で最大70倍のズームが可能な高精細のカメラとスピーカーを搭載した機器を配備する。

 支援を受ける医療機関に脳死の可能性がある患者がいる場合、連携する大学病院など地域の拠点施設の医師とオンラインでつなぎ、患者の様子や脳波のデータなどを即時に共有する。拠点施設の医師は、機器から送られてくる画像やデータを確認しながら、脳死判定から臓器摘出まで必要な手続きを助言し、支援を受ける医療機関が判断する。摘出した臓器が移植に適するかの評価にも活用する。

 臓器提供は、患者の脳全体の機能が失われ、回復する可能性がない脳死と判断された場合、医療機関が終末期医療の一つの選択肢として患者家族に提示し、同意を得られた際に行われる。

 医療機関による家族への対応では、「患者に回復の見込みがないことに家族の理解が得られているか」や、「家族に臓器提供を積極的に勧めない」などの注意点がある。臓器移植法に基づく法的脳死判定の手順は厳格に定められており、深い 昏睡こんすい 状態にある、瞳孔の拡大・固定が見られるなどの項目を医師が2回確認する必要がある。

2025.01.29 18:58:10

赤ちゃん「泣いてもよかよ!」…パパママ応援の気持ち、可視化で温かな社会に

 電車やバス、飲食店などで赤ちゃんが泣き出した際、周囲の人が、受け入れる気持ちを表そうというプロジェクトが広がっている。福岡県筑後市出身のエッセイスト紫原明子さん(42)(東京在住)が発案した取り組みで、「泣いてもいいよ」とのメッセージを記載したグッズの製作・配布に取り組む自治体は全国30自治体となった。紫原さんは「温かな気持ちが広がってほしい」と願っている。(南佳子)

社会全体で応援

 「WE (ラブ) 赤ちゃん」「泣いてもよかよ!」

 JR筑後船小屋駅(筑後市)では、こうしたポスターを在来線と新幹線の待合室に貼り、駅員が制服に缶バッジを付けて周知を図っている。

 「WE♡赤ちゃんプロジェクト」と名付けた取り組みの一環だ。ほほえむ赤ちゃんの絵とともにメッセージを記載したステッカーや缶バッジを製作するなどし、まちなかに掲示したり、身に着けてもらったりする。泣きやまない赤ちゃんに慌てるパパやママを、社会全体で応援する狙いがある。

 プロジェクトに賛同した同市は昨秋から、筑後弁版のステッカーや缶バッジ、チラシなどを1000個・枚ずつ作り、市役所などで配布。同駅のほか、JR羽犬塚駅や商業施設でもポスターの掲示などでアピールしている。2歳児と0歳児を育てる同市の会社員女性(34)は「周りに迷惑をかけるかもしれないと、電車移動を避けることがあった。受け入れる気持ちを示してくれるのは心強い」と話す。

 市こども家庭サポートセンターの担当者は「小さな思いやりを積み重ねる一歩。子育て世帯の外出時の負担の大きさに理解が進んでほしい」と期待する。

言葉に救われる

 紫原さんがプロジェクトを思い立ったのは自身の育児中の経験がきっかけだった。長男(22)と長女(19)が幼かった頃、家族で外食中に泣き出し、居合わせた人に「帰ってくれ」と言われ、悔しさが募った。カフェで乳児が泣き出し、申し訳なさそうに退店する母親を見たこともある。声を掛けたかったが勇気が出なかった。

 こうした経験から、「話しかけなくても、泣き声を不快に思っていないと伝えられないか」とプロジェクトを考案。仕事で関わりのあった母親ら向けのウェブサイトを運営する企業エキサイト(東京)に提案し、2016年に始動した。

 プロジェクトを紹介するウェブサイトでは、「賛同する♡」ボタンを設けて賛同者を募っている。これまでに9万人を超えており、「言葉に救われる」「赤ちゃんはいっぱい泣いて笑って元気に育ってね」といった優しいメッセージも寄せられている。

各地の方言で

 「泣いてもいっちゃが!」(宮崎県)「泣いでもさすけね!」(福島県)など、各地の方言で呼びかけるのもポイントとなっている。

 京都府では「泣いてもかましまへん!」と掲げた大型広告が商店街に登場し、京都市内にはラッピングバスが走る。山口県は「泣いてもええっちゃ!」のグッズを製作し、協力する店舗を通じて配布した。

 紫原さんは「泣き声を受け入れる気持ちの可視化が進めば、肯定的に見守る温かな社会になるのではないか」と期待する。

 子育て支援に詳しい立正大の岡本依子教授(発達心理学)は「子どもは地域で育てるものだと認識できる仕組み。育児初心者の父母にとっても地域とのつながりを実感でき、安心して親としての成長を重ねられる」と評価している。

「外出時に苦労」85%

 子育て世代が、外出時に周囲の目を気にして負担に感じていることを示す調査がある。乳幼児用品メーカーのピジョン(東京)が昨夏、3歳以下の子を育てる父母1000人に調査したところ、育児中の外出について85・4%が不便さや苦労を感じると回答。「飲食店や公共の場で赤ちゃんがじっとできない」(41・4%)、「ぐずる・泣きやまない」(39・9%)といった回答が多かった。

 また、うれしいと感じる周囲の手助けが「よくあった」とした人が16・2%にとどまるなど、更なる理解が求められる回答が目立った。

2025.01.29 16:16:01

コロナ無料検査の水増しで都の補助金8億円詐取か、男7人容疑で逮捕…申請簡素化で不正相次ぐ

 東京都が実施した新型コロナウイルスの無料検査事業で、検査数を水増しして補助金約8億円をだまし取ったとして、警視庁は29日、東京都中央区の医療関連会社「アイチェック」(現・日本IC)元営業担当課長の島田雅史容疑者(59)(品川区小山)ら男7人を詐欺容疑で逮捕した。他人の名前や検体を使って虚偽申請を繰り返したとみている。

 他に逮捕されたのは、同社元社員の村松学容疑者(35)(文京区小日向)ら。

 捜査関係者によると、7人は共謀して2022年10月~23年1月、都内約20か所の検査所で行ったPCR検査と抗原検査の実施件数を、約11万9000件水増しして都に報告し、計約15万9000件分の補助金約7億9500万円をだまし取った疑い。

 同社は、都の無料検査事業に登録した新宿区の検体検査会社と提携し、検査所を運営。補助金を申請する際、島田容疑者と村松容疑者らが、無関係の名簿を使って別人の名前を記載し、知人から集めた唾液を検体として使っていたという。

 外部から通報を受けた都が調査し、不正が発覚した。警視庁は口座の分析などから、島田容疑者が補助金を私的に流用し、他の6人に分配していたとみている。

 無料検査事業は、国の臨時交付金約6200億円を財源とし、都道府県が21年12月~23年5月に実施。検査1件につき、PCR検査で最大1万1500円、抗原検査で最大6500円の補助金が交付された。

 同事業は申請手続きを簡素化したことで、各地で不正申請が相次いだ。都は計21事業者が計393億円を不正に申請していたとして、交付の取り消しや、交付済みの計約102億円の返還命令を行っている。

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