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2025.01.23 11:49:51

医療機関の倒産や休廃業、昨年最多786件…コロナ禍後の行動変化や物価高騰・経営者の高齢化で

 民間信用調査会社の帝国データバンクは22日、2024年に倒産や休廃業・解散した医療機関が786件で、比較可能な00年以降で最多だったと発表した。新型コロナウイルスの流行に伴う受診行動の変化や物価高騰などによる収入減のほか、経営者の高齢化などの影響としており、増加傾向が続くとみている。

 786件のうち倒産は64件、負債総額は282億4200万円だった。これまでの倒産件数の最多は09年の52件だった。

 倒産に至った主な理由は、「収入の減少」が41件(64%)を占めた。背景には、コロナ禍をきっかけに受診控えや受診先を見直す患者が増えたことや、コロナ関連の補助金の削減、医薬品や検査キットなど医療資材の高騰があると分析した。

 休廃業・解散に至った722件のうち診療所は587件と8割にのぼった。残りは歯科医院118件、病院17件だった。

 同社が全国の診療所の経営者約1万人の年齢を調べたところ70歳以上が54・6%だった。同社は「経営者の高齢化が進み、健康問題や死亡により、急速に診療所の廃業が増えていくだろう」としている。

2025.01.22 14:35:11

資生堂の偽化粧品を販売容疑で逮捕、中国から客に直送…「健康被害のおそれも」と注意呼びかけ

 資生堂の化粧品で人気ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」の偽物をインターネット上で販売したとして、大阪府警は、府内に住む男2人について、商標法違反と医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕状を取った。22日、このうち1人を逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。模倣品は中国から客に直送されていたといい、府警は、模倣品の違法販売が組織的に行われていた可能性もあるとみて調べる。

 捜査関係者によると、男らは昨年5~6月、同ブランドの化粧下地「ヴォワールコレクチュールn」の模倣品2点をネットで2人に販売した疑いがある。

 「クレ・ド・ポー ボーテ」は人気の高級化粧品ブランドで、模倣品は正規品(税込み7700円)より安く売られていた。健康被害は確認されていないという。

 資生堂はホームページで、同ブランドなどの模倣品が出回っているとし、「効能や安全性の保証は一切できない。健康被害を引き起こすおそれもある」と注意を呼びかけている。

 消費者庁によると、通販サイトやフリーマーケットサイトなどで化粧品の模倣品が販売されるケースが相次いでいる。本物より安価だが、購入者から「使ったら肌が痛み、赤くなった。返品もできなかった」などの相談が寄せられているという。

 同庁は「模倣品は衛生状態がよくない場所で作られていたり、粗悪な原料が使われたりしている可能性がある」と警告。担当者は「定価からかけ離れて安価で商品説明が不自然な場合などは注意してほしい」と話す。

2025.01.21 14:29:13

100歳以上が「全国平均の3倍」、丹後地域の秘密探る…高齢者100人のDNA解析へ

 京都府立医大は、100歳以上の高齢者(百寿者)の割合が全国平均の3倍に上る京都府北部の丹後地域で、高齢者の遺伝情報などから健康長寿の要因を探る研究を新たに始めると発表した。高齢者の血液からDNAを抽出して80万か所を解析し、生活習慣や運動機能などと照らし合わせて長く健康的に暮らせる 秘訣(ひけつ) に迫る。(矢沢寛茂)

 丹後地域(京丹後市、宮津市、伊根町、与謝野町)は人口10万人当たりの百寿者数(昨年9月現在)が平均約228人で、府全体の平均(83・59人)や全国平均(76・49人)を大きく上回っている。

 府立医大は2017年から京丹後市立弥栄病院と協力し、65歳以上の高齢者を対象に身体測定や食生活、血管年齢など約2000項目にわたって長寿に関わる要因を詳細に調査しており、これまで約1100人が協力してきた。

 今回の研究は、DNAの分析などを手がけるバイオ企業「レリクサ」(東京都)が協力。高齢者100人から健診や検査で得られた血液2ミリ・リットル分の提供を受け、抽出したDNAを解析する。

 DNAはメチル基という物質がくっつく「メチル化」が起こることで、遺伝子の働きが変化することが知られており、老化などとの関連が注目されている。研究ではメチル化を手がかりに、腸内細菌や 口腔こうくう の状態など過去の研究成果も踏まえながら、遺伝情報の違いが健康や長寿とどのように関連しているのかを追跡する。

 内藤裕二教授(生体免疫栄養学)は「これまで食べ物やライフスタイルなどによる影響を明らかにしてきたが、遺伝情報も生かし、10年、20年後の健康状態を高い信頼性で予測できるようにしたい」と意気込みを語った。

2025.01.20 17:29:21

「防災研修はリアル伝えないと無意味」…体育館で避難所生活し1泊体験、参加女性「過酷さは想像以上」

 災害時に日常生活とは異なる環境下で様々なストレスにさらされる避難所生活。厳しい現実をどう自分のこととして考え、備えてもらうか。岡山県備前県民局は、NPO法人や自衛隊などと連携し、一般人が参加する避難所運営体験「防災研修キャンプ」を実施した。企画運営は実際に被災地で活動する民間団体が担い、実際の避難生活に近い状況を経験できるのが特徴だ。(浜端成貴)

 「ストレスを知識と備えに変えて持ち帰ってください」

 昨年11月23日午後、玉野市の市立荘内中学校の体育館で、能登半島地震でも支援に携わった一般社団法人「epoおかやま笑顔プロジェクト」代表の村上浩司さん(57)が、参加した7~81歳の男女32人に呼びかけた。

 研修プログラムは市の避難所運営マニュアルを参考に村上さんが考えた。同日午前10時52分、南海トラフを震源とする地震があり、玉野市で震度6強を観測。上下水道の機能が停止し、ペット連れや車椅子が必要な障害者など様々な事情を抱えた避難者が、市の指定避難所である同体育館に訪れていると想定した。

 最低気温が6・9度となったこの日、体育館にはエアコン設備はなく、用意された段ボールベッドの材料は15人分で、参加者の多くが冷たい床に毛布を敷いて寝る必要があった。常設のトイレの使用も禁止し、段ボールと袋で手作りした災害用トイレしか使えないルールも設けた。自衛隊日本原駐屯地による夕食の炊き出しも実施した。

 段ボールベッドの分配では、独身男性が率先して家族連れに譲るなどしてスムーズに決まった一方、洗濯物については、「男女の洗濯物をわけて干し、下着類は人目につかない奥の方に干した方がいいのでは」「自分の洗濯物が他人のものと一緒になるのが嫌だという意見もある。家族の洗濯物で固めた方がいいのでは」などと議論が交わされた。

 その後、解散するのがよくある避難訓練だが、この研修では参加者は実際に体育館に1泊。翌朝、AED(自動体外式除細動器)を使った救命措置の体験や、災害時の避難行動計画作りに取り組むなどした。

 真庭市の栄養士の女性(60)は「1日だから耐えることができたが、避難所生活の過酷さは想像以上で、備えの必要性を改めて実感した。大変だったけど、とても学びになった」と話した。玉野市の中学2年女子生徒(14)は「寒くて不安な気持ちもあったけど助け合いが安心につながると気づけた」と話した。

 村上さんは「防災研修はリアルを伝えないと意味がない」と話す。1995年の阪神大震災以降、避難所の運営に関心が高まり、全国各地で研修が行われてきた。しかし、能登半島など多くの被災地で村上さんが目の当たりにしたのは、水や食料などの備蓄が一切ない避難所があるなど、阪神大震災の時とほぼ変わっていない実態だった。

 自治体の防災研修の多くは、部屋の冷暖房が利いているなど、被災地の状況とはかけ離れた環境下で実施されることが多く、本格的なプログラムの必要性を感じたことが、この研修を始めたきっかけという。

 災害対策基本法では、避難所の指定や開設は自治体の義務だが、環境整備は努力義務とされる。劣悪な環境は災害関連死の増加につながり、阪神大震災では921人に上った。能登半島地震では避難所業務を全て自治体が担うケースもみられ、自治体が日ごろから民間団体と連携を深め、すぐに運営を支援してもらえるような態勢作りが求められている。

 内閣府が2023年9~11月に全国の1313市区町村を対象に行った調査では、避難所の運営を担う職員向けの訓練を実施している自治体は全体の65・8%。そのうち、避難者の受け入れなど開設訓練は81・6%を占めるものの、ルールの検討など運営訓練を実施している自治体は48・4%にとどまる。

 防災研修キャンプの実施を発案した備前県民局地域づくり推進課の川辺秀則参事は「避難所の運営は地域住民の力が欠かせない。つらさも含めて防災について考えてもらうことで、有事の際に本当に役に立つ力が身につくはず」と話している。

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