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2024.01.18 17:50:23

DMAT、救命医療から災害関連死の対応に幅広げる…能登では感染症が課題で「真価問われるのはこれから」

「阪神」の教訓 能登の被災地で〈上〉

 国内で初めて震度7が記録された阪神大震災から17日で29年となった。元日に最大震度7の激しい揺れが襲った能登半島地震の被災地には、あの日の教訓を胸に奔走する人たちがいる。

 「いつ破綻してもおかしくない」。発生から72時間が過ぎた4日夜、多くの死傷者が出た石川県 珠洲すず 市の市総合病院に到着した 淡海おうみ 医療センター(滋賀県草津市)のDMAT(災害派遣医療チーム)の藤井 応理まさのり 医師(58)は、 逼迫ひっぱく した状況に緊張した。

 珠洲市内で機能している医療機関はここだけで、被災者が殺到。かろうじて出勤できた医師や看護師らが不休で対応していた。

 水や食料も不足し、約100人の入院患者の4割に転院してもらうことに。DMATが受け入れ先を探す電話をかけ続け、ヘリによる患者搬送に走り回った。食事は持ち込んだカップ麺。3時間の仮眠を取り、同じチームの看護師ら4人と現地の医療スタッフを支えた。

 1チームのDMATに課せられた任務は3日間。長野や愛知などからも続々とチームが派遣され、病院関係者は「DMATのおかげで多くの命が救われた」と感謝する。

 阪神大震災では当時、現場で医療活動を行う専門チームはなく、治療の優先度を選別する「トリアージ」や重傷者の搬送が機能しなかった。救急医療体制が整っていれば、救えた命は500人はいたとされる。

 62人が死亡した淡路島の中央部に位置する兵庫県立淡路病院(洲本市)にはあの日、次々とけが人が運び込まれた。当時、当直明けで治療にあたり、現在は六甲アイランド甲南病院(神戸市東灘区)に勤める水谷和郎医師(59)は「1人の患者を複数の医師で診るなど混乱した。もっとやれることがあったはず」と悔やむ。

 阪神大震災を教訓に、厚生労働省は、DMATの研修・登録制度を2005年に創設。災害現場での救命医療や患者の広域搬送を担うチームが全国の災害拠点病院などに設置され、11年の東日本大震災や18年の西日本豪雨などで活躍した。

 DMAT事務局によると、今回、石川県七尾市の病院などに活動拠点が置かれ、県からの要請に基づき全国各地のチームが集結。珠洲市では6日夜、倒壊家屋から124時間ぶりに90歳代女性が救出され、DMATの治療で一命を取り留めた。水谷医師は「災害はいつどこで起こるかわからない。災害医療への備えはますます重要になる」と話す。

 創設から20年近く経過し活動内容も進化している。当初は災害直後の救命活動に注力していたが、災害関連死が東日本大震災などで相次ぎ、活動の幅を拡大。高齢者施設や避難所などに出向いて被災者の健康状態を把握、保健所などにつなぐ取り組みを強化した。

 被災地の県庁などに運営本部を置き、現地に入るチームからの情報を集約して、どこに支援が必要かを共有する体制も作り上げてきた。DMAT創設に尽力し、今回も輪島市立輪島病院に出動した医師の本間正人・鳥取大教授(61)は「病院や避難所などの情報が集まり、きめ細かな支援が実現できつつある」と話す。

 一方、能登では長引く避難生活で、避難所などで広がる感染症への対策が喫緊の課題となっている。本間教授は自戒する。「これまでの教訓がどこまで生かせるか。我々の真価が問われるのはこれからだ」

 阪神大震災を教訓に、医療や被災者支援など様々な分野で新たな仕組みが導入された。能登半島の被災地でどう生かされているのか、3回に分けて検証する。

 ◆ DMAT =Disaster Medical Assistance Teamの略。1チームあたり医師、看護師など5人前後で構成される。現地での活動費は災害救助法や医療法に基づき、国が負担する。チーム数は年々増加し、昨年3月末時点で1773チームが登録されている。

「夢への一歩見守って」 神戸の学生 亡き祖父へ

 「夢への一歩を踏み出します。見守ってください」。阪神大震災で祖父・輝行さん(当時58歳)を亡くした大学4年の板倉 真尋(まひろ) さん(21)(神戸市東灘区)は17日早朝、東遊園地(同市中央区)の追悼会場で、祖父に心の中で語りかけた。

 今春、夢だったテレビ制作の仕事に就く。その報告をしようと、父の哲也さん(53)とともにこの日、祖父のゆかりの地を巡った。

 祖父が亡くなった長田区のアパート跡で、哲也さんから「焼け跡でおじいちゃんの骨を見つけたんや」と聞かされ、胸が締め付けられた。哲也さんが骨を持ち込み、検視を受けた当時の遺体安置所の前も通った。

 靴職人だった祖父は借金で廃業したが、小学校の用務員をしながら3人の子どもを育て上げた。「やるからには最後までやれ」が口癖だったという。

 哲也さんは幼い頃、輝行さんによく洋食店に連れられ、料理人に憧れた。民間企業に就職したが、震災の1か月前、輝行さんに夢を打ち明け、「やりたいなら、やってみろ」と背中を押された。哲也さんは会社を辞め、14年間の修業後、洋食店「Itasan亭」を開業。自分と輝行さんが同じ「板さん」と呼ばれていたことを知り、名付けた。店は今年、15年を迎える。

 東遊園地では、大勢の人が黙とうする様子を目にした。真尋さんは「人生の半ばで亡くなった人が大勢いたこと、父のように思いをつなぐ遺族がたくさんいることを実感した。夢に向かって頑張りたい」と語った。

2024.01.18 14:27:55

PCR検査事業への出資金名目で6000万円詐取疑い、6人逮捕…数十億円集金か

 新型コロナウイルスのPCR検査キット販売事業への出資金名目で現金6000万円を詐取したなどとして、警視庁は17日、医療関連会社「アイチェック」(東京都中央区)社長の金子賢一容疑者(44)(中央区勝どき)ら男6人を詐欺や金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕した。警視庁は2022年春以降、全国の約100人から計数十億円を集めたとみて実態を調べる。

 他に逮捕されたのは、いずれも金子容疑者の知人で、コンサルティング会社役員の入江正和(50)(港区浜松町)、別のコンサルティング会社社長の曽我郁人(29)(港区高輪)両容疑者ら。

 捜査関係者によると、金子容疑者らは22年3~9月頃、金融商品取引業の登録をせず、都内の会社役員ら5人に対し、自社で行うPCR検査キット販売事業への出資を勧誘。このうち3人に「月5~8%の配当を出す」「元本を保証する」などと虚偽の説明をして、出資金名目で計6000万円をだまし取った疑い。

 PCR検査を巡っては、当時、都道府県が無料検査事業の登録事業者に補助金を交付。アイチェック社は事業者と提携して無料検査所を運営していた。金子容疑者らは「補助金で5倍近くの利益が出る」「コロナはいつ収束するかわからない。出資できるのは今だけ」と勧誘していたという。

 配当が滞り、出資者が昨年春に警視庁に相談して発覚した。警視庁は、金子容疑者らが出資金を検査キット販売事業に回さず、出資者への配当や個人の借金返済などに充てたとみて、資金の流れを調べている。

 同社は20年12月に設立。ホームページによると、新型コロナやピロリ菌の検査キット販売などを手掛けている。民間信用調査会社によると、22年11月期の売上高は約57億円だった。

2024.01.17 14:59:38

中国の人口208万人減の14億967万人、出生率は建国以来最少…「人口減時代」突入か

 【北京=川瀬大介】中国の国家統計局は17日、香港、マカオを除く中国本土の総人口が2023年末時点で14億967万人となり、前年から208万人減少したと発表した。人口減は1961年以来、61年ぶりに減少に転じた2022年に続いて2年連続。出生数は7年連続して前年を下回った。中国は、本格的な人口減時代に入った模様だ。

 23年の出生数は902万人で、前年比54万人の減少だった。死亡数は1110万人で、人口の減少幅は前年の85万人から拡大した。人口1000人当たりの出生率は6・39人で、出生数とともに1949年の建国以来最少を更新した。

 65歳以上の人口は2億1676万人で、総人口に占める割合は前年から0・5ポイント増の15・4%。少子高齢化が進んでいる実態も浮き彫りになった。

 中国の人口減は、1979年に導入された「一人っ子政策」が2015年末に廃止されるまで続いたことによる影響が大きい。中国では人口減に危機感を強める 習近平シージンピン 政権の号令で、出産を奨励する補助金の支給など対策が打ち出されているが、歯止めがかからない状況だ。

 国連人口基金(UNFPA)の推計によると、中国は23年中に人口世界一の座をインドに明け渡したとみられている。

2024.01.16 15:51:35

老化抑える脳細胞特定、マウス実験で寿命延長も成功…5年以内に人への応用目指す

 老化を抑える働きを持つ脳内の神経細胞をマウス実験で特定したと、米ワシントン大の今井眞一郎卓越教授(老化学)らの研究チームが発表した。この神経細胞を操作して老化を遅らせ、寿命を延ばすことにも成功しており、5年以内に人での臨床応用を目指すという。論文は米科学誌「セル・メタボリズム」に掲載された。

 チームは、哺乳類の視床下部にある「Ppp1r17神経細胞」に注目した。遺伝子操作でこの神経細胞の働きを強化したところ、何も操作しなかったマウスより寿命が7~8%延びた。運動量も通常の1・5~2倍に増加したという。

 この神経細胞は脂肪細胞を刺激し、老化を抑える働きがある「 eNAMPT 」という酵素を分泌させる。加齢とともにこの神経細胞の働きが衰え、老化が進むと考えられるという。今井氏は「人間でも同様の仕組みがあるか確かめ、抗老化の治療法の実現に向け、研究を進めたい」と語る。

 理化学研究所の影山龍一郎・脳神経科学研究センター長(神経発生学)の話「特定の神経細胞が、寿命にこれほど影響することが示されたのは驚きだ。仕組みの解明や人での研究が進めば、老化研究は大きく進展する」

2024.01.16 09:00:00

開運力やモテ度を顔動画で判定、就活・婚活での自己診断に活用…徳島大が開発「今後は医療分野でも」

 徳島大は人の心について、顔のわずかな振動やその周波数を分析することで、「健康」「情熱」「モテ度」など“心の魅力度”を判定するシステム「カリスマ鑑定団」を開発したと発表した。就活、婚活で自己診断に使えるほか、今後は医療分野への活用も目指す。(北野浩暉)

 システムでは、スマートフォンなどで約1分間、静止した顔の動画を撮影し、表情の微妙な動きや、頭部の微振動、その周波数などを解析。それらの数値から、攻撃性やストレス、安定性、自制心など10項目について点数化し、10万人のビッグデータと照らし合わせて鑑定する。

 鑑定では▽心の健康▽才能▽情熱▽前向きな思考にもとづく「開運力」▽人を引きつける「モテ度」の5要素を合わせて「心の魅力度」と定義。上限を350点とし、260点以上は「カリスマ、モテ無限大」、230点以上は「エリート、モテモテ」、200点以上は「ホープ、チョイモテ」などの5段階で心の魅力度を判定し、結果に応じたアドバイスを提示する。

 システムで使用しているのは、カメラで撮影した情報と画像処理により、人のわずかな動作や微振動を解析できる「バイブライメージ技術」。人間の頭部の微振動は、平衡感覚をつかさどる前庭器官や感情的な反射とつながっており、頭や目の動きが感情の状態を反映するという。

 この技術は、かつて旧ソ連が潜入したスパイを見つけるために開発。現在、日本でも防犯システムなどに活用されているという。

 「カリスマ鑑定団」は、脊椎動物であれば使用可能で、犬や猫の「心の魅力度」も判定できるという。これまで就職活動中の学生の自己分析に使ったり、婚活に導入したりして検証を重ねてきたという。

 開発した徳島大学大学院社会産業理工学研究部の宇都義浩教授(情報工学)は「自分で取り繕えない、無意識の動きを解析するシステム。うつ病治療など、医療分野でも活用できるように研究を進めたい」と話した。

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