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2024.01.25 15:49:16

がん10年生存率上昇53・5%、小児がんは「5年」と大差なし…国立がん研究センター

 国立がん研究センターは25日、2011年にがんと診断された患者約36万人の10年生存率が53・5%だったと発表した。前回調査(10年)より0・2ポイント上昇した。あわせて、小児(15歳未満)と、思春期以降のAYA世代(15~39歳)の10年生存率を初めて公表、小児がんは約7~9割と、5年生存率と大きな差がなかった。

 全国のがん診療連携拠点病院などが参加する「院内がん登録」の大規模データから集計した。前回に続いて、純粋にがんのみが死因となる場合を推定した「純生存率(ネット・サバイバル)」を算出した。部位別の10年生存率は、前立腺がんで85・4%、乳がん(女性)で82・9%、大腸がんで57・9%、胃がんで56・8%などだった。

 また、小児がんとAYA世代のがんは、全ての死因による死亡者数を計算に含めた実測生存率を算出し、5年生存率と比較した。

 小児の10年生存率は、白血病で86・2%、脳腫瘍で71・5%。いずれも5年生存率との差は約2ポイントとなり、わずかな低下にとどまった。

 一方、AYA世代の10年生存率は、子宮がん(子宮 けい 部・子宮体部)が、5年生存率より1・4ポイント減の87・2%だったのに対し、脳・脊髄腫瘍は同5・7ポイント減の77・8%など、がんの種類によって低下の幅に差がみられた。

 同センター院内がん登録分析室の石井 太祐たいすけ 研究員は「治療が大きく進歩しているがんでは、現在はもっと生存率が向上している可能性がある。今回、小児がんで、5年以降の死亡リスクが低いことを初めて示せた。患者の希望になる明るいデータになる」と話している。

2024.01.23 18:52:34

大学病院での医師の教育や研究は「労働」、厚生労働省が曖昧な「自己研さん」通達を改正

 厚生労働省は、医師が知識や技能を習得するための「自己研さん」に関する2019年7月の通達を一部改正し、労働に該当する具体例として、大学病院での教育や研究を明示した。従来の通達は、自己研さんと労働の線引きが曖昧で、 恣意しい 的な運用を懸念する声が医療現場から上がっていた。医師の残業時間を制限する「医師の働き方改革」が4月から始まるのを前に、解釈を明確化する狙いがある。改正は15日付。

 同省は、診療などの本来業務と直接関連がなく、上司の指示もない自己研さんは、労働に該当しないとの考え方を通達で示し、その運用方法については別の通達で説明していた。

 しかし、昨年8月、甲南医療センター(神戸市)の専攻医が過労自殺した問題が発覚。労働基準監督署が認定した長時間労働について、センター側は「自己研さんが含まれる」と反論し、各地の医師から、本来は労働にあたる時間が自己研さんとして処理されているとの声が相次いでいた。

 こうした状況を受け、自己研さんの考え方に関する通達は維持した上で、運用方法に関する通達を改正した。大学病院の教育や研究は本来業務にあたると明示。具体的には、▽試験問題の作成・採点▽学生の論文作成に対する指導――などを挙げた。

 一般病院については、具体例は示さなかった。その理由について同省は「自己研さんと業務の区分が難しい」としているが、今回の改正で「医師と上司の理解が一致するよう双方で十分に確認すること」を求める文言を新たに加えた。

 同省は「一般病院も、大学病院の考え方に準じて業務との関連性を適切に判断してほしい」としている。

2024.01.23 15:53:26

出生前検査、ダウン症など3種類からの拡大ルール案…日本医学会の認証施設での実施など盛り込む

 妊婦の血液から胎児の病気を調べる「新型出生前検査」について、こども家庭庁は、臨床研究として現在の3種類の病気以外に検査対象を広げて実施する際のルールの素案をまとめた。検査対象は一律でなく、胎児に病気がある可能性が高い妊婦とすべきことや認証施設での実施などを求めている。同庁の専門委員会が年度内にもとりまとめる予定だ。

 検査は現在、日本医学会の運営委員会から認証された施設で、ダウン症など3種類の病気に限って調べている。しかし、認証されていない施設では3種類以外の病気まで検査しているところもある。検査対象を広げる場合、現時点では検査精度などが十分に確立されていないため、臨床研究として進め、検査の妥当性を評価する必要がある。

 素案では、3種類以外の病気を対象とする場合、〈1〉胎児の病気を早期に発見し、早期治療につなげることを念頭に置く〈2〉遺伝カウンセリングやサポートを受けられる認証施設で行う〈3〉各施設の倫理審査委員会で審査を受け、日本産科婦人科学会に報告する――ことなどを盛り込んだ。

 委員からは、より慎重な審査体制を望む声も出ている。こうした意見も踏まえ、最終的にルールをとりまとめ、認証施設で臨床研究を行う際の参考にしてもらう。

新型出生前検査 妊娠9~10週頃以降の妊婦から採血し、胎児にダウン症などの疑いがあるかどうかを調べる。病気が分かると、人工妊娠中絶を選択する妊婦も多く、倫理的な課題がある。日本医学会の運営委員会が認証していない施設で検査し、メールで検査結果を送るだけで相談に応じないなどのトラブルも起きている。

  ◆新型出生前検査 =妊娠9~10週頃以降の妊婦から採血し、胎児にダウン症などの疑いがあるかどうかを調べる。病気が分かると、人工妊娠中絶を選択する妊婦も多く、倫理的な課題がある。日本医学会の運営委員会が認証していない施設で検査し、メールで検査結果を送るだけで相談に応じないなどのトラブルも起きている。

2024.01.22 19:46:28

男性はビールロング缶2本、女性は1本以上で生活習慣病のリスク高める…厚労省の飲酒指針案

 過度な飲酒で健康を害する人を減らそうと、厚生労働省は飲酒についてのガイドライン(指針)案を初めてまとめた。生活習慣病のリスクを高める飲酒量(純アルコール量)を「男性で1日あたり40グラム以上、女性で20グラム以上」と示した。

 純アルコール量20グラムは、ビールで500ミリ・リットル(ロング缶1本)、日本酒で1合程度に相当する。指針案では、少量であっても、がんや高血圧といった生活習慣病のリスクを高めるとの研究結果を引用し、「飲酒量をできるだけ少なくすることが重要」と強調した。

 国内では高齢化や若者の「酒離れ」などを背景に、成人1人あたりの酒の消費量は減り続けている。一方で、2022年にアルコール性肝疾患で死亡した人は1996年の2・6倍に上り、飲酒習慣がある女性の割合は増えている。

 欧米などでは、体質や文化などを踏まえて健康を害さない飲み方を具体的に示した指針を設けている。このため、厚労省は国内でも性別や年齢、体質などに応じた指針を作る必要があると判断し、有識者による検討会で策定を進めてきた。

 指針案では、女性や高齢者は体内の水分量が少ないため、アルコールの影響を受けやすいと指摘。女性は男性より少量かつ短期間でアルコール性肝硬変になる場合があり、高齢者は一定量を超えると認知症の発症の可能性が高まるとした。

 「飲酒時に顔が赤くなりやすい」など、体内の分解酵素の働きが弱い人は国内に約41%いるとするデータを紹介し、「(飲酒に慣れたとしても)口の中や食道のがんのリスクが非常に高くなる」と警告した。

 避けるべき飲酒として、純アルコール量60グラム以上の大量摂取や、不安や不眠の解消目的などを例示。「その日の体調によっても体に与える影響は変わる。飲めない人に無理に飲酒を勧めることも避けるべきだ」と注意を呼びかけている。

 指針案はパブリックコメント(意見公募)を踏まえ、今年度中に公表される。

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