NEWS

2025.02.19 19:10:45

岩手県滝沢市が中学プール授業を廃止へ…老朽化・欠席者増が要因、スポーツ庁は批判「続けるべき」

 岩手県滝沢市は、新年度から市内の中学全6校で水泳の実技授業を廃止する。プールの老朽化に加え、コロナ禍以降に授業の欠席者が増えたことや熱中症のリスク、体と心の性認識のギャップへの対応などを理由とするが、スポーツ庁は「全国的に例がない。水泳は必修であり、続けるべきだ」と批判している。

 市教育委員会によると、市内の中学校でコロナ禍以降、体調不良などを理由に水泳の授業を欠席する生徒が増加。ある中学校では2023年度の欠席者の割合が36%に達した。

 体調不良の理由は、発熱やせきといった風邪の症状だけでなく、「気分が悪い」という理由もあるという。以前は体調次第で教員が授業参加を促すこともあったが、コロナ禍以降、市教委が学校に対し「生徒や保護者の申し出を一層尊重すること」を求めていることも欠席増の一因という。

 各中学のプールはいずれも設置から30年を超え、2校は50年超。市は、設備を更新する場合は多額の費用がかかるほか、欠席者の増加や熱中症の懸念などを踏まえ授業の廃止を決めた。

 ただ、学習指導要領では中学1、2年生は水泳を必修とし、文部科学省は「水泳指導の手引」の中で「水泳の事故防止に関する心得は必ず取り上げること」と規定している。水泳を実施しないケースは「適切な水泳場の確保が困難な場合」のみだ。

 市は新年度以降、心肺蘇生法などの応急処置や水難事故防止に関する授業を拡充することで対応する。小学校では水難事故防止の観点から25メートルなど一定の距離を泳げるようにするため、実技の授業は継続する。

 スポーツ庁の担当者は「滝沢市が実技授業をやめる理由としては弱い。もっと慎重に判断すべきだ」と話す。岩手大学の清水茂幸教授(保健体育科教育学)は「水泳の授業は水から子どもの命を守るという観点から非常に重要。欠席をしないように指導しながら授業を行うことが大切だ」と指摘している。

2025.02.17 18:28:03

「吸わない」「飲まない」「かけない」健康マージャンフェスタ…シェア日本一「大洋技研」の和歌山・御坊市が「聖地」を目指す

 認知症予防や知的ゲームとして「健康マージャン」が注目されている。和歌山県の御坊市立体育館で16日、全国から集まった老若男女が卓を囲む全国大会「健康マージャンペアフェスタ」が開かれ、腕を競い合った。

 健康マージャンは「たばこを吸わない」「お酒を飲まない」「お金をかけない」がスローガン。頭脳や指先を使って気軽に楽しめ、世代間交流も図れる。

 御坊市にはマージャン関連製品で日本一のシェア(占有率)を誇る会社「大洋技研」があり、市は「マージャンの聖地」を目指している。2019年のねんりんピック、21年の国民文化祭で健康マージャンの会場となったことを契機に、23年には自治体単独で初の全国大会を開催した。

 今回は2回目。予選を勝ち上がるなどした全国の一般参加者(9~90歳)とプロ 雀士じゃんし が集い、初回を上回る計288人が参加した。

 会場にはマージャン卓72台が並び、対局が始まると、参加者は手元や相手の捨てた はい を慎重に見ながら試合を進めた。ジャラジャラと牌を交ぜる音や、「リーチ」「ロン」といった声が静かに響いていた。

 新潟県から参加した男性(61)は「感心してしまう打ち方をする人もいて勉強になる。プロと対局できるのも楽しみ」と話した。

2025.02.17 15:57:08

患者ごとの「オーダーメイドiPS細胞」を全自動作成…山中教授らのプロジェクト4月に始動

 患者一人ひとりの血液からオーダーメイドのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を全自動で作る京都大iPS細胞研究財団(理事長=山中伸弥・京都大教授)のプロジェクトが4月、大阪市北区にある最先端医療の国際拠点「中之島クロス」で始動する。年内にも大学や企業に試験的に細胞の提供を始め、将来は年間1000人分の作製を目指す。

 山中教授は2019年に「my iPSプロジェクト」を提唱。「みかん箱くらいの密閉された装置の中で、iPS細胞を全自動で作れるようにする」と構想を語った。その後、国内外の企業と研究を進め、装置がみかん箱より一回り大きい点を除けば、ほぼ実現可能な段階にきたという。

 中之島クロスではドイツ製の自動培養装置を4台から14台に増やし、iPS細胞を安定して作製できるラインを構築する。日本製の装置の開発も進んでおり、1人分で5000万円かかるとされた製造コストを、100万円以下に抑える目標を掲げる。

 再生医療に使うiPS細胞は、健康な人の血液から作って財団が備蓄する細胞が大半を占めている。山中教授らは、これまでに日本人の4割に適合する細胞をそろえたが、さらに増やすには珍しい型の細胞を持つ人を見つける必要があり、難しいという。今回のプロジェクトで患者本人から安くiPS細胞を作れるようになれば、理想的な形で補完できる。

 財団の塚原正義・研究開発センター長はプロジェクトについて「患者の治療に使われなければ意味がない、という思いで進めてきた。医療現場に届けるまでやり遂げたい」と話している。

2025.02.14 15:41:31

生まれつきの難聴を早期発見へ、母子手帳にサイトメガロウイルス感染症の検査記入欄を新設

 こども家庭庁は4月、生まれつきの難聴の原因となる「先天性サイトメガロウイルス感染症」を早期発見する自治体の体制を強化する。母子健康手帳に、感染を調べる検査結果の記入欄を新たに設け、難聴が疑われる子どもがこの検査を受けたかを保健師らが確認できるようにする。

 サイトメガロウイルス(CMV)は、ウイルスを含む唾液や尿などを介して感染する。健康な人が感染しても多くは無症状だが、妊娠中に感染すると、胎児に感染し、難聴や発達の遅れなどが起こるリスクがある。新生児の0・3%が先天性CMV感染症だったとの報告がある。

 早期発見の手がかりの一つが新生児聴覚検査だ。全ての新生児が、おおむね生後3日以内に受ける。難聴の可能性が判明した新生児には、CMVの感染を調べる尿検査が推奨されている。生後3週間以内の実施が望ましいが、医療関係者にも認知度が低く行われず、CMVの感染が見逃されているケースがある。

 このため同庁は新年度から発行する母子健康手帳に、尿検査の日付や結果の記入欄を新設。自治体の保健師らが、母子の自宅を訪問し、授乳などを指導する際、難聴が疑われた新生児が尿検査を受けたか確認するよう求める。必要に応じ、医療機関の受診を促すなど支援する。

 先天性CMV感染症は、子どもの難聴の原因では、遺伝性に続き2番目に多い。2023年、初の治療薬が登場した。生後2か月以内の治療開始が望ましい。CMVに詳しい日本大学板橋病院小児科の森岡一朗教授は、「母子手帳に記載されることをきっかけに、妊婦や医療関係者に、速やかに治療すれば、聴力を改善する可能性もあることなどCMVへの理解が広がることを期待している」と話す。

2025.02.14 14:14:25

鉛製給水管なお203万件…20年前に全廃目標、水道管から溶け出し腹痛や神経のまひの恐れ

 家庭などに水を供給する給水管のうち、健康被害を及ぼす恐れのある「鉛管」(鉛製給水管)について、国が2004年に早期全廃の目標を掲げたにもかかわらず、23年3月時点で約203万件(上水道の契約数ベース)残っていることが日本水道協会(東京)の調査でわかった。専門家は、国や、自治体など水道事業者が住民に交換の必要性などを強く周知すべきだと指摘している。

 鉛を過剰摂取すると腹痛や神経のまひなどの症状が出る。鉛管はさびにくく、国内では1980年代まで広く使用されていたが、鉛が溶け出す恐れがあり、国は2004年に策定した「水道ビジョン」で「早期ゼロ」を打ち出した。

 同協会は05年度から全国に残っている鉛管を集計しており、06年3月時点は約508万件だった。直近の23年3月時点は約203万件で、全契約数(約5933万件)の3・43%。都道府県別で最も割合が高かったのは香川県で、約12万件と県全体の27・75%を占めた。

 浄水場からつながる給水管のうち、幹線部分の鉛管は各自治体が計画的に取り換えているが、家庭などに枝分かれする部分は大半が住宅敷地に埋設され、住民らが自己負担で交換する必要がある。枝分かれ部分は設置記録が残っていないケースも多く、水道事業者の2割弱は残った鉛管の有無も把握できていないという。

 水道事業に詳しい北海道大の松井佳彦・名誉教授(環境リスク工学)は「国が改めて交換の必要性を強く周知し、手引を更新して事業者に配布して機運の醸成を図るべきだ」と話す。

 水道管から溶け出した鉛による健康被害も出ている。山口県の30歳代男性は、山口市のアパートに住んでいた17年末、吐き気や下血が続いて入院。同市上下水道局が調べると、台所などの水から基準値の40倍を超える鉛が出た。

 男性は両手のしびれや 倦怠けんたい 感などに悩まされ、アパートの大家を相手取り、損害賠償を求めて提訴。山口地裁は22年10月の判決で「症状は水道管から溶出した鉛に起因するものと合理的に推認される」と認定し、大家側に約700万円の支払いを命じた。男性は車いす生活を余儀なくされており、取材に「日本の水道水は安全だと信じていた。『まさか』と思った」と明かした。

10

投稿はありません