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2024.02.08 16:35:26

高齢者の救急搬送に対応「地域包括医療病棟」、中小病院に創設へ…高度医療の大病院と役割分担図る

 増加する高齢者の救急搬送に対応するため、厚生労働省は、新たな受け皿となる「地域包括医療病棟」を創設する。地域に根差した中小病院を中心に設け、高度な医療を担う大病院との役割分担を図る。看護師などを手厚く配置し、治療からリハビリ、退院に向けた支援までを一貫して提供して、早期に自宅に戻れるようにする。2024年度の診療報酬の改定に盛り込む。

 新病棟は、高齢者の救急患者の受け入れやケアに必要な体制を備えるのが特徴だ。高齢者に多い 誤嚥性(ごえんせい) 肺炎や尿路感染症などの患者を想定している。入院中は体力を維持するため、リハビリや栄養管理で支援し、退院後の生活相談、在宅復帰後に必要な介護サービスの調整までを包括的に提供する。

 看護師は、患者10人につき1人以上、夜勤は2人以上を病棟に配置するという施設基準を設ける。リハビリなどを行う理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士を常勤で置くことも求める。診療報酬改定では、導入した医療機関に対する新たな入院料を設けて整備を進める。

 近年、65歳以上の高齢者の救急搬送件数は増加傾向にある。総務省消防庁によると、22年は386万人に達し、10年前より100万人以上も増え、救急搬送全体の6割を占めている。搬送件数は35年にピークを迎えると見込まれている。

 一方で、高齢者の救急患者のうち、9割が軽症・中等症患者だ。大病院に運ばれて治療を受けても、入院中にリハビリなどが十分に行われず、結果的に心身の機能が低下してしまうことが指摘されている。

 厚労省はこれまで「団塊の世代」が全て75歳以上になる25年を見据え、治療後の在宅復帰を支援する「地域包括ケア病棟」を14年に新設し、拡充を進めてきた。23年5月時点で約2600病院に約10万床が整備された。高齢者の救急搬送受け入れにも対応してもらうことが期待されていた。

 しかし、症状が安定した患者を想定した病棟であるため、病院側から十分に対応できない場合があるとの声が上がっていた。地域包括ケア病棟は看護師が患者13人につき1人以上配置されている。新病棟はさらに手厚くすることで、救急患者への対応を可能にする。

  ◆診療報酬 =医療機関や調剤薬局が医療サービスや薬の対価として受け取る報酬。入院料や初診料、手術料など内容に応じて細かく点数化し、価格が設定されている。原則2年に1度見直される。国が進めたい医療政策に医療機関を誘導する手段にもなっている。2024年度から施行時期がこれまでの4月から6月になる。

2024.02.06 18:15:28

救急搬送に「マイナ保険証」活用、通院歴や処方薬の把握を容易に…搬送先選定の迅速化にも期待

 総務省消防庁は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を活用した患者搬送を5月中旬にも開始する。これまで搬送の参考とする患者の医療情報は、口頭で聞き取ることが多かったが、マイナ保険証を利用することで、通院歴や処方薬などの情報を把握することが容易になり、救急活動の迅速化や円滑化につながると期待している。

 救急現場では、隊員が患者から通院先の医療機関や処方薬などの情報を聞き取って搬送先を決める際の参考にしている。しかし、詳細な情報を覚えていない人も多く、症状によっては会話が困難なケースもある。こうした状況を踏まえ、同庁は患者がマイナ保険証を所持している場合、その場で医療情報を閲覧できるシステムを導入する。

 具体的には、患者に同意を得た上で、隊員が専用のカードリーダーでカードを読み取り、レセプト(診療報酬明細書)処理を担う厚生労働省所管の「社会保険診療報酬支払基金」に情報照会するシステムを構築する。このシステムにより、救急車内に設置したタブレット端末で患者の氏名や住所のほか、医療機関の通院歴、処方薬、手術などの情報を閲覧できるようになる。

 このシステムの導入によって、患者から救急隊員への詳しい説明が不要になる上、隊員にとっても、正確な情報に基づき、迅速に搬送先の医療機関を選定することが可能となる。受け入れる医療機関側も事前に既往歴や処方実績などを把握することで、円滑な救命処置ができる。

 同庁は、全国の47消防本部の500隊程度で、実証事業としてこの取り組みを始める考えで、今月上旬まで参加を公募している。実際に現場でマイナ保険証を活用した救急搬送を実施する時期は大型連休明けの5月中旬を見込んでいる。将来的には意識のない重体患者のような場合でも、医療情報を閲覧できるようにすることも検討している。

2024.02.06 13:48:47

関東甲信の大雪、都内で109人搬送…交通機関の乱れ・高速道通行止めも解消へ

 関東甲信の大雪は6日未明にピークを過ぎ、同日朝には多くの地域で小康状態となった。鉄道などの交通機関の乱れは一部で続いているが、高速道路の通行止めも解消に向かう見通し。ただ、気圧の谷などの影響で6日も雪や雨が降る所があり、気象庁は路面凍結などによる交通障害に注意を呼びかけている。

 東京消防庁によると、東京都内では5日から6日午前10時までに4~92歳の男女計109人が転倒するなどして救急搬送された。

 関東甲信の9都県に出されていた大雪警報は6日朝までにすべて解除された。気象庁によると、6日午前8時現在の積雪は、前橋市7センチ、都心6センチ、さいたま市5センチなど。

 高速道路は関東甲信越、東海地方の広い範囲で通行止めが行われ、国土交通省によると、6日午前5時時点で、41路線325区間に及んだ。周辺道路などでの大規模な立ち往生は発生しなかったという。通行止めは除雪作業が完了し次第、順次解除される見通し。

 JR中央線の高尾―富士見間は始発から運転を見合わせ、6日午後1時に再開予定。西武池袋線などの一部の列車は運休している。そのほか都内を走る多くの在来線は一部で遅れはあるが始発から運行している。

2024.02.05 11:25:46

医療機関も被災した能登半島地震、広がるコンテナ型の診療所…コロナ対応で感染拡大予防に活用

 医療機関が被害を受けた能登半島地震の被災地で、コンテナ型の医療救護所での診察が行われている。避難所では新型コロナウイルスなどの感染症患者を隔離するスペースが少なく、プライバシーに配慮した対応も難しかった。感染症拡大を防ぐためウイルスを室外に出さない機能を備えたコンテナもあり、活用が広がっている。(広瀬航太郎、小山内裕貴)

 「喉に痛みがある」

 石川県 珠洲すず 市の市立 宝立ほうりゅう 小中学校に設置されたコンテナ型の医療救護所で、避難者の男性(61)がせきや鼻水などの症状を訴えた。高槻病院(大阪府)から支援に来た医師(49)は抗原検査をスタッフに指示し、新型コロナの陽性と診断した。

 男性は受診する2日前に喉の違和感を覚えて避難所を離れ、倒壊を免れた自宅物置で寝泊まりしていた。解熱剤を処方された男性は、「かかりつけ医はどこも被災していて困っていた。近くで診てもらえてよかった」とほっとした表情を見せた。

 厚生労働省と内閣府は被災地の医療態勢を補うため、コンテナを所有する病院などに派遣を要請。先月31日時点で珠洲市や輪島市、志賀町の3市町に計21基が設置された。さらに追加する予定もある。

 宝立小中学校のコンテナは幅2・4メートル、奥行き6メートルほどで、医師2人を含む7人で運用している。長引く避難の影響で高血圧や歩行障害などの訴えが多く、片付け中のけがや、やけどの患者もいるという。

 このコンテナは「発熱外来」としての使用を想定し、ウイルスや細菌を紫外線で不活性化する設備を備える。地震直後に駆けつけた医療チームは避難所を巡回し、避難者が行き来する廊下についたてを設置するなどして診察していた。

 石川県医師会によると、能登半島北部の4市町にある診療所など約30か所のうち、通常診療を再開できたのは2日現在で輪島市と能登町、穴水町の計11か所で、珠洲市の6診療所は再開できていない。

 NPO法人が運営する「空飛ぶ捜索医療団ARROWS」の一員として医療コンテナでの活動に参加した医師(救急医)は、「診療所が再開できるまで、医療コンテナが地域の医療を支えることになるだろう。在宅避難者もいるので、活動している場所を知ってもらうことが課題だ」と語った。

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