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2024.04.19 18:40:13

感染症対策の政府計画、経済活動とバランス図り「柔軟かつ機動的」に切り替え…コロナ教訓に

 次の感染症危機に備え、政府が改定する「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の概要が判明した。新型コロナウイルスの教訓をもとに、新たにワクチンや水際対策など7項目を追加した。経済活動とのバランスを図るため、状況の変化に応じ、感染対策を「柔軟かつ機動的」に切り替えることも盛り込んだ。

 同計画は2013年に策定され、抜本的な改定は初めて。政府は来週にも開く有識者会議に改定案を示し、6月中の閣議決定を目指す。

 新たな行動計画では、科学的知見が不十分でも、医療の 逼迫ひっぱく 時には必要な場合、「まん延防止等重点措置」や「緊急事態宣言」など強度の高い措置を講じると明記した。措置は「必要最小限の地域、期間、業態」を対象とし、「国民生活や社会経済活動への影響の軽減を図る」と掲げた。コロナ禍で飲食店の営業時間の短縮など行動制限が長期化し、国民の不満が高まったことを考慮した。

 ワクチンを巡っては、平時から開発・製造に必要な体制や資材を確保し、発生初期には国内で開発や生産を要請するとともに、海外のワクチン確保を進めるとした。コロナ禍でマスクなど必要な物資が不足したことから、国や自治体による備蓄の推進も打ち出した。事業者には生産や輸入促進の要請を行い、医療機関などに十分に行き渡る仕組みを作る。

 感染症の大流行は、1968年の香港風邪や2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、20年のコロナなど、一定の周期で発生している。政府は実施状況を年度ごとに点検し、今後はおおむね6年ごとに計画を見直す方針だ。

不断の点検と見直し欠かせず

 新型コロナウイルス禍では、政府は感染拡大の防止に軸足を置き、国民の行動や経済活動を長期にわたって制限した。国産ワクチンの開発が諸外国に後れを取ったほか、マスクなど必要な物資も不足し、多くの課題が浮かび上がった。

 行動計画の改定案では、社会経済活動と感染対策の両立を重視し、平時からワクチン開発や物資の備蓄など体制を整えるとした。

 感染症対策の司令塔となる内閣感染症危機管理統括庁の幹部は「また必ずパンデミック(世界的大流行)は来る」と警戒を緩めないよう訴える。行動計画は実行されているかどうか。不十分な点はないか。コロナ禍の教訓を生かすためにも、官民による不断の点検と見直しが欠かせない。(政治部 松本健太朗)

2024.04.18 15:52:49

「グーグルが悪評を放置」医師ら60人が提訴へ…地図上の口コミ、「営業権の侵害」

 米グーグルが提供するインターネットの地図サービス「グーグルマップ」の口コミ欄で、一方的に投稿された悪評を放置されて営業権を侵害されたとして、全国の医師ら約60人が18日、グーグルに損害賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こす。悪質な投稿を書かれた側が、投稿者自身ではなく、サービスを提供するプラットフォーマーの賠償責任を問う訴訟は異例だ。

 グーグルマップはネット上で店舗や施設の名前、連絡先、住所などが表示され、グーグルのアカウントがあれば、利用者が匿名で5段階の評点をつけたり、口コミを投稿したりできる。

 口コミ欄は利用者の平均的な評価や施設の詳細が分かるとして支持され、地図サービス利用者の99%がグーグルマップを利用しているとの民間の調査結果がある。一方、「悪意に満ちた投稿が書き込まれる」などと、その「弊害」を指摘する声も出ていた。

 訴訟を起こすのは、経営する医療機関がグーグルマップに掲載された東京や神奈川、愛知、大阪、福岡など全国各地の医師や医療法人。口コミ欄に「頭がいかれている」「人間扱いされなかった」などと悪評を投稿され、5段階の評点が1のケースもあった。診察内容には守秘義務があり、口コミ欄に反論を投稿することも難しく、グーグルに削除を求めても応じてもらえなかった医師もいるという。

 口コミを巡り、書き込まれた側が投稿者を特定して損害賠償を求める訴訟はあるが、特定までに費用や時間がかかるとされてきた。

 今回は、サービスの提供で広告収入などの利益を得ているグーグルを被告とする点に特徴がある。グーグルが悪質な口コミが掲載される状況を放置していることで、原告らが悪評への対応を強いられるなどの不利益を被り、営業権を侵害されたと主張する。原告1人あたり2万3000円、計約150万円の賠償を求める。

 グーグルマップに関する苦情は、総務省の「違法・有害情報相談センター」にも寄せられている。相談件数は2020年度の103件から、22年度は180件に増加している。

 原告代理人の中沢佑一弁護士は「グーグルマップは誰もが利用する社会インフラにもかかわらず、十分な対応がされず、書かれた側が不利益を受け続けている。被害をなくすには、投稿の場を設けたプラットフォーマーの責任を問う必要がある」としている。

 グーグルは取材に「不正確な内容や誤解を招く内容を減らすよう努めており、不正なレビューは削除している」と回答した上で、今回の訴訟については「コメントを控える」とした。

2024.04.15 15:48:43

24時間使えるAED、学校校門前やコンビニに設置の自治体増…盗難の懸念にはGPSや保険で対応

 救命処置に使われる自動体外式除細動器(AED)が、屋外や24時間営業の店舗に設置されるケースが増えてきた。AEDの多くは屋内に置かれているが、施設の休館日や夜間には持ち出せない。各地の自治体が旗振り役となり、学校の校門前やコンビニエンスストアなどに設置を進め、住民らに活用を呼び掛けている。

 さいたま市は昨秋、市内全58中学校の校門前などにAEDを設置。住民向けに説明書もつけた。昨年12月には、付近の商業施設で倒れた女性の救命処置に使われたこともある。市内の小学校では2011年、駅伝の練習直後に倒れた小学生が亡くなる事故があった。当時、AEDがすぐに使われなかったことを教訓に、市は市民講習会を開くなど活用に積極姿勢だ。市内の区役所でも、屋内に加えて屋外への設置を進める。

 24時間営業の店舗など63か所に置いたのは東京都港区。いつでも使えるAEDが半径300メートル以内にない地域を抽出し、該当エリアの住民の希望を聞き取ってきた。千葉県我孫子市は昨年度、誰でも24時間使える状態で置く場合、購入費などの半額(最大25万円)を補助する制度を導入した。市の担当者は「24時間営業の店舗が近くにない場所もある。少しでも設置しやすくしたい」と話す。

 心停止の状態になると、助かる確率は1分ごとに約10%低下するとされ、AEDの迅速な活用が救命率の向上につながる。規制緩和で一般の人も使えるようになってから今年で20年。公共施設や店舗に設置されたAEDは全国で約67万6000台(22年)に上るとの推計もあるが、埼玉県が県内の状況を調べたところ、23年9月末現在、24時間いつでも使えるのは14%にとどまっていた。

 ただ、屋外設置の場合に懸念されるのが盗難だ。さいたま市ではAEDに全地球測位システム(GPS)機能をつけ、持ち出された場合の追跡を可能にした。24年度中に学校や図書館など約220か所のAEDを屋外に移す計画の東京都江戸川区は一部に盗難保険をかけた。

 活用には、どこに設置しているかを日頃から知らせておくことも必要となる。東京都港区や大田区はホームページなどに「AEDマップ」を載せ、周知を図っている。救命処置などの蘇生科学が専門の石見拓・京都大教授は「近くにいつでも使えるAEDがあれば、自宅で心停止が起きた場合の救命にも役立つ。どこにあるのか、一目でわかる地図と一緒に整備を進めるのが望ましい」と話している。

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