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2025.04.08 01:54:33

iPS細胞から「心筋細胞」のシート、医療用製品の承認申請は世界初か…大阪大発の企業

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを作って心臓病の患者に移植する治療法について、大阪大発の新興企業「クオリプス」(東京)は8日、細胞シートの製造販売承認を厚生労働省に申請した。iPS細胞を使った医療用製品の承認申請は世界初とみられる。

 対象となるのは、心筋 梗塞こうそく などで心臓の動きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者の治療。悪化すると心臓移植などが必要になるが、国内では臓器提供者が少ない現状がある。

 同社の最高技術責任者を務める阪大の澤芳樹・特任教授らは、人のiPS細胞から心筋細胞を作り、直径3・5~4センチ、厚さ0・1ミリのシートを作製。2020年1月~23年3月、阪大病院など4施設で患者計8人に対し、1人あたりシート3枚(細胞数は計約1億個)を心臓に貼り付ける治験を行った。

 澤特任教授や同社によると、移植を受けた8人全員で安全性を確認。移植後26週よりも52週の方が症状の改善がみられ、社会復帰も果たしているという。

 同社の草薙尊之社長は「ようやく第一歩を踏み出すことができた。一日も早く承認をいただき、患者さんに治療を届けたい」と話している。同社が作製したiPS細胞由来の心筋細胞のシートは、13日開幕の大阪・関西万博で展示される。

 iPS細胞を活用した医療用製品の開発は国内外で進み、製薬大手の住友ファーマなどが今年中にも、パーキンソン病の患者に移植するiPS細胞由来の神経細胞について承認申請を目指している。

 八代 嘉美よしみ ・藤田医科大教授(幹細胞生物学)の話「既存の治療では改善が見込めない患者に対し、治療の選択肢が増えれば大きな意義がある。iPS細胞の技術を新たな医療として申請できる段階に来たのは画期的なことだ」

2025.04.07 01:25:03

患者搬送ヘリ事故、機長らの回復待ち事情聞く方針…運航会社「不時着水したとみている」

 長崎県・壱岐島沖で6日、医師や患者ら6人が乗ったヘリコプターが転覆しているのが見つかった事故で、唐津海上保安部(佐賀県)は7日、心肺停止状態で救助された男性医師(34)と、女性患者(86)の家族の男性(68)の死亡が確認されたと発表した。患者はすでに亡くなっており、事故による死者は計3人となった。

 国の運輸安全委員会の航空事故調査官2人は7日午後に福岡市に入り、聞き取り調査などを始める。唐津海保も業務上過失致死の疑いなどを視野に入れ、救出された男性機長(66)らの回復を待って事情を聞く方針だ。

 患者を乗せて長崎県の対馬を離陸したヘリは6日午後に対馬沖で消息を絶ち、同日午後5時過ぎ、壱岐島の北東約30キロの沖合に浮かんでいるのが見つかった。ヘリがフロート(浮き)を展開していたことから、運航会社の「エス・ジー・シー佐賀航空」(佐賀市)は同日夜の記者会見で、「(墜落ではなく)不時着水したとみている」と説明した。

 6人のうち、男性機長と男性整備士(67)、女性看護師(28)は意識があり、医師が勤務する福岡和白病院(福岡市東区)に搬送されて治療を受けているという。

2025.04.02 12:37:40

妊婦の交通費・宿泊費の補助新設…町内の県立病院で「お産対応」困難になる見通しで

 妊婦の経済的負担の軽減を図ろうと、長野県木曽町は、妊婦健診や出産にかかる交通費などを助成する制度を新設し、運用を始める。木曽郡内で唯一、お産に対応している県立木曽病院(木曽町)で2026年4月以降、お産の受け入れが困難になる見通しであることも踏まえた制度で、今月1日分から適用する。

 対象は、自宅や里帰り先から最寄りの 分娩ぶんべん 取り扱い施設までの移動におおむね30分以上かかる妊婦と、30分以内に妊婦健診ができる施設があるが、その施設が分娩を取り扱わなくなるなどして、切り替えた別の施設まで30分以上かかる妊娠後期の妊婦など。

 交通費は妊婦健診や出産の際に自家用車を使った場合、1キロあたり30円で計算した往復分を受診日数に応じて支援する。出産時はタクシー使用も認め実費分を補助する。宿泊費も出産時に限り1万1000円を上限に最大14泊分支援する。

 出産時の妊婦に対する交通費や宿泊費については、自宅や里帰り先から最寄りの分娩取り扱い施設までの所要時間がおおむね60分以上だったり、ハイリスクと判断され、そうした妊婦を受け入れる「周産期母子医療センター」まで60分以上かかったりする妊婦に対し、国が24年度から、交通費の8割と、宿泊に要した実費額から1泊あたり2000円を控除する額を補助する制度(補助率は国2分の1、県4分の1、市町村4分の1)を創設。その後、妊婦健診時にも交通費を8割補助する制度を新設した。

 一方、町では26年4月から木曽病院で出産ができなくなる見通しであることも考慮し、適用範囲を広げて幅広く支援することを決めた。

2025.04.01 02:34:48

「将来の妊娠」に備え、若い男女へのアドバイザーを国が養成へ…背景に高齢出産や過度なダイエット

 こども家庭庁は、将来の妊娠に備えた「プレコンセプションケア(プレコン)」を若い男女に普及させるため、学校や企業などで助言するアドバイザーを養成する方針を固めた。若い世代に将来の妊娠に向けて必要な知識を身につけてもらい、健康管理を促す狙いがある。近く示す今後5年間のプレコン推進計画案に盛り込む。

 政府は2021年2月に成育医療等基本方針を閣議決定し、プレコンの推進を掲げた。22年度から自治体に「性と健康の相談センター」の設置を促し、保健師らが妊娠や性感染症などの相談に乗る取り組みを支援している。

 背景には、流産の可能性が高まる高齢出産の増加や、不妊の原因になる過度なダイエットの広がりがある。厚生労働省によると、晩婚化が進み、23年に35歳以上で第1子を出産した割合は21・6%と1970年の10倍に増加。BMI(体格指数)が低い痩せ形の20~30歳代女性も5人に1人(20・2%)に上った。

 一方、同庁が昨年、高校生から30歳代の男女2万人に行った意識調査では、「妊娠や出産に関わる身体的な情報」を学んだ経験を持つのは6%にとどまった。そのため同庁は、特に若年層を対象に、プレコンに関する普及・啓発を強化する必要があると判断した。

 アドバイザーは、一定の研修を修了した教諭や保健師らを想定している。性行為や避妊といった未成年に多い疑問から、不妊症など妊娠を現実的に考える世代特有の悩みまで幅広い知識を研修で身につけさせ、学校での出前講座や企業での研修などでアドバイスしてもらう。

 同庁は現在、今年度から5年間で取り組むプレコンの推進計画をまとめており、アドバイザーの養成を盛り込む方向だ。今後、アドバイザー向けのマニュアルも整備する。

 プレコンに詳しい国立成育医療研究センターの荒田尚子医師は、「若い世代が自分の体について知ることは、人生の選択肢を増やし、将来のリスクを減らすために重要だ。次の世代の健康にもつながる」と話している。

 ◆ プレコンセプションケア =妊娠(コンセプション)の前(プレ)のケアの意味。将来の妊娠を考えて女性やカップルが自身の健康や生活に向き合うことで、世界保健機関(WHO)が2013年に重要性などを文書でまとめた。政府は成育医療等基本方針で、「男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促す」と定めている。

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