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2025.04.11 12:27:45

福島県の公立小中学校、バリアフリー対応トイレの設置率全国ワースト2位…整備目標の達成は遠く

 福島県内の公立小中学校のうち、43・1%しかバリアフリー対応のトイレを校舎に整備していないことが、文部科学省の調査で分かった。整備率は全国ワースト2位だった。公立学校の多くは災害時に避難所となるため、文科省は車いすの利用者らも使いやすいトイレの設置を求めているが、実現は難しい状況だ。

 調査は昨年9月、すべての国公立小中学校と特別支援学校を対象に行われ、先月28日に公表された。

県内の公立小中学校573校のうち、バリアフリー対応のトイレを校舎に設置している学校は247校で整備率は43・1%だった。前回調査(2022年9月時点)に比べ3・3ポイント増えたものの、全国で最低だった鹿児島県(40・3%)に次いで低かった。

 校舎の昇降口や玄関から教室までの段差を解消するスロープなどを整備している学校は231校で整備率は40・3%(前回比9ポイント増)。こちらも鹿児島県に次いで全国で2番目に低かった。

 そのほか、体育館内にバリアフリー対応のトイレを設置している学校の整備率も34・4%で全国平均を大きく下回った。

 一方、校舎など学校施設のバリアフリー化に関する計画を策定している自治体は、59市町村のうち11市町村。内訳は、会津若松市など5市、川俣町など3町、檜枝岐村など3村だった。

 政府は2025年度末までに、災害時に近隣住民の避難所に指定されている全学校(総学校数の約94%)の校舎へのバリアフリー対応のトイレの整備を目指している。しかし、調査結果によると、県内では25年度末までに設置予定の学校は44・5%にあたる255校にとどまり、文科省の整備目標には届かない見込みだ。

 設置が進まない理由について、県内の教育委員会は「多くの学校で老朽化が激しく、改修工事も一緒に行うと時間がかかる」「財政が厳しく、学校施設のバリアフリー化まで取り組むのが難しい」などとしている。

 文科省は既存の校舎をバリアフリー化する費用の補助制度を設けている。県教委財務課施設財産室は、「徐々に整備されているが、全国からみると割合は低い。引き続き、市町村教委に国の補助制度を周知し、バリアフリー化の推進を呼び掛けていきたい」としている。

2025.04.11 12:21:01

国立病院機構が懲戒処分の47人を報道発表せず、ホームページのみ掲載…「公表のあり方について検討」と担当者

 全国に140病院を展開する独立行政法人国立病院機構(本部・東京)で、2024年度に公表された計47人の懲戒処分がいずれも報道機関には発表されず、ホームページ(HP)のみの掲載にとどまっていたことがわかった。うち2人は最も重い懲戒解雇で、停職も22人に上った。機構本部は重大事案は報道機関に発表するとしているが、全国の各グループは懲戒解雇でも行っていなかった。

 機構は全国を地域ごとに6グループに分けて運営している。読売新聞が各グループに問い合わせたところ、24年度にHPで公表された懲戒処分は▽北海道東北7人▽関東信越10人▽東海北陸10人▽近畿3人▽中国四国7人▽九州10人――だった。

 このうち、東海北陸は2月、先輩後輩の関係の影響力を用いて後輩職員と性的関係を繰り返し結ぶなどした東名古屋病院(名古屋市)の男性理学療法士を懲戒解雇にした。関東信越も昨年10月、通勤中に2人を死傷させる事故を起こし、有罪判決を受けた西新潟中央病院(新潟市)の看護師を懲戒解雇していた。

 患者にかかわる不祥事も相次ぎ、東海北陸は昨年12月、鈴鹿病院(三重県)で障害がある複数の入院患者を虐待したとして、看護師ら女性4人を停職などにした。

 人事院は「懲戒処分の公表指針」で、公表方法について「記者クラブ等への資料の提供その他適宜の方法によるものとする」と例示している。

 各グループは22~23年頃までは懲戒処分を報道機関に発表していたが、24年度は懲戒処分の多くは3週間程度、HPに掲載された後、消されていた。報道発表の事例がなかったことについて、東海北陸は「処分がこれ以上であれば発表するというものではなく、個々に判断している」と説明する。

 機構本部の担当者は「(読売新聞の)指摘を受けるまで、懲戒解雇でも報道発表していない事案があることは把握していなかった。隠しているように見られるのは本意ではない。公表のあり方について検討を始めている」と話した。

  ◆国立病院機構= 国の医療政策や地域医療の向上に貢献することを目的に、全国の旧国立病院と旧国立療養所を合わせ、2004年に発足した厚生労働省が所管する独立行政法人。日本最大級の医療グループで約6万4000人(昨年4月時点)が働いている。職員は「みなし公務員」に該当する。

2025.04.10 15:58:52

1型糖尿病患者の皮下脂肪から作ったインスリン産生細胞、自身に移植…徳島大病院で夏にも治験

  膵臓(すいぞう) の細胞が正常に働かない「1型糖尿病」の治療について、徳島大病院(徳島市)は、患者自身の脂肪からインスリンを出す細胞を作り、再生医療技術で患者に移植して根本的治療を目指す治験を今夏にも始めると発表した。安全な世界初の治療方法を目指す。(吉田誠一)

 糖尿病のうち1型の割合は約5%で、膵臓内の細胞の塊「 膵島すいとう 」が壊れ、血糖値を制御できなくなる病気。若い頃から発症し、毎日何度もインスリン注射が必要となる。病院によると、根本的な治療方法では、脳死ドナーから膵島を取り出し、患者に移植する方法があるが、日本では患者10万人あたりのドナーは0・6人しかおらず、移植は困難となっている。

 そこで消化器・移植外科の池本哲也医師(53)らは、患者からの採取や臨床への応用が安全で容易な脂肪由来の幹細胞に着目した。再生医療技術で、“膵島”(インスリン産生細胞・IPC)にして移植することにし、2018年度から研究を開始した。

 1型患者の皮下脂肪から作った膵島をマウスに移植したところ、2週間後から血糖が正常化し、1年以上持続。豚でも腸間膜内に移植すると、同様の効果を確認できた。

 池本医師らは、この「IPC自家移植」を臨床応用。局所麻酔した患者から皮下脂肪組織を1グラム採取し、分離・精製して脂肪由来幹細胞とし、4週間かけて培養しながら分化・成熟させ、IPCを作製する。体への負担が少ない 腹腔鏡ふくくうきょう 手術で患者の腸間膜内に注入して移植する方法を確立した。このうち培養技術については特許も取得した。

 徳島大で3月24日にあった記者会見で、池本医師らは「この治療方法は血糖の制御に優れるうえ、患者の自家細胞を使うため拒絶反応がなく、毒性や移植で腫瘍を作ることもない」と利点を強調。「人への初めての投与で効果と安全性を示し、治療法を世界に発信したい」と話した。

 1型の治療では、京都大病院がiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った細胞シートを移植する治験を実施する計画がある。池本医師は「患者自身の細胞を使うこちらの治療法は(遺伝子導入などがないため)DNAダメージの危険性が少なく、安全面でアドバンテージがある」と強調した。

2025.04.09 18:18:58

未来のバイオコンピューターに可能性、iPSから「脳オルガノイド」作製…万博で東大チーム展示へ

 東京大の研究チームは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞の塊「脳オルガノイド」を、大阪・関西万博で6月から展示する。小さな電極の上で18個の脳オルガノイドを連結させたもので、細胞に計算や情報処理をさせる未来のバイオコンピューターの先端研究を見せるのが狙いだ。

 準備を進めているのは、池内 与志穂よしほ ・東大教授(分子細胞工学)の研究室に所属するドゥンキー智也特任研究員(31)。ドゥンキーさんはスイス生まれで、脳オルガノイドは万博のスイスパビリオンで6月11日~8月12日に展示される。

 展示するのは、縦2ミリ・メートル、横4ミリ・メートルの電極チップ上に並べた脳オルガノイドだ。一つは0・3~0・4ミリ・メートルの塊で、数万個の神経細胞が含まれている。並べて培養すると自然に神経の突起を伸ばし、塊が互いに連結するという。チップには2万6400個の電極があり、細胞の活動を記録できる。

 会場では脳オルガノイドを顕微鏡で観察できるほか、互いに電気信号をやり取りした様子などを見ることができる。チップはスイスの新興企業が開発した。

 人の脳も多数の領域間で信号のやり取りをして高度な機能を実現しており、研究成果は脳の仕組みに似たバイオコンピューターの実現につながる可能性があるという。ドゥンキーさんは、「特に子どもたちに見てもらい、科学に関心を持ってほしい」と話している。

2025.04.09 08:20:00

百日せき流行が急拡大、すでに昨年1年間上回る4771人…薬効きにくい耐性菌が広がっている恐れ

 激しいせきが続く百日せきの流行が拡大している。感染症を監視する国立健康危機管理研究機構によると、今年の累計患者数は3月30日時点で4771人(速報値)に達し、2024年1年間の4054人をすでに上回った。専門家は「重症化を予防するため、子どものワクチン接種を検討してほしい」と呼びかけている。

 百日せきは、細菌によって引き起こされ、主にせきやくしゃみなどの 飛沫ひまつ でうつる。せきで呼吸困難になることがあり、生後6か月未満の乳児が重症になりやすく、肺炎や脳症などを引き起こすと命にかかわる。感染症法で、18年から全ての患者を把握することになった。

 今年の患者数は1月6~12日に135人が確認されて、その後も増加傾向が続く。直近1週間の3月24~30日には578人と、18年以降で最多となり、都道府県別では新潟が73人、兵庫が36人、沖縄が35人となっている。治療には抗菌薬が使われるが、薬が効きにくい耐性菌が大阪や沖縄などで見つかり、国内で広がっている恐れがある。

 百日せきを含む5種混合ワクチンは、公費による定期接種の対象で、生後2か月から2歳半頃までに4回の接種が標準的となっている。日本小児科学会は、乳児の早期接種と、小学校入学前と高学年での任意接種を促している。

 浜松医科大の宮入 いさお 教授(小児科学)は「コロナ禍では流行が抑えられ、免疫を持つ人が少なくなっている。ワクチンの効果が薄れる時期の追加接種も検討してほしい」と話している。

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