【第76回】L・グローバーを大きく開花させたもの
2023年10月15日 公開今年のPGAツアーで最大の注目を集めた選手は誰かと問われたら、その答えは、きっと何通りもあることだろう。
生涯4度目の腰の手術から戦線復帰したタイガー・ウッズが昨年9月に復活優勝を遂げ、通算80勝目をマークして大いに盛り上がっているアメリカ・プロゴルフ界。2019年はウッズのさらなる優勝、そしてメジャー15勝目に期待が集まっている。
そんなウッズはもちろんのこと、華々しい舞台で戦う欧米ツアー選手たちの大半が、実は社会貢献活動に非常に熱心に取り組んでいることをご存じだろうか。
世界のトッププレーヤーたちは、なぜ社会貢献活動に力を入れるのか。「朝日新聞」「新潮社フォーサイト」「ALBA」「Number」など数々のメディアに連載を持つゴルフジャーナリストの舩越園子氏が、在米26年の見聞に基づき、その理由を解き明かしていく。
講師 舩越 園子
フリーライター
東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。
百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。
在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。
『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。
アトランタ、フロリダ、NY、ロサンゼルスを経て、現在は日本が拠点。
今年のPGAツアーで最大の注目を集めた選手は誰かと問われたら、その答えは、きっと何通りもあることだろう。
イングランドのロイヤル・リバプールが舞台となった今年の全英オープンは、36歳の米国人、ブライアン・ハーマンの勝利で幕を閉じた。
今年4月、PGAツアーのRBCヘリテージを制したのは、28歳の英国人選手、マシュー・フィッツパトリックだった。
今年6月。米ゴルフ界で、こんな出来事があった。優勝賞金360万ドル(約5億円)が用意されていたPGAツアーの「格上げ大会」で、見事、勝利を飾った選手が、一夜明けたら全米オープン出場を目指して地区予選に挑んでいた親友ゴルファーのバッグを担ぐキャディに早変わり。
今年からPGAツアーでは、トッププレーヤーが一堂に会する試合を増やす目的で、従来のいくつかの大会を賞金総額2000万ドル級に引き上げる「格上げ大会」のシステムを導入している。
毎年4月に開催されるマスターズは、ゴルフのメジャー4大会の1つであり、米ジョージア州のオーガスタ・ナショナルを舞台に繰り広げられるゴルフ界最大のフェスティバルでもある。
今年2月に米フロリダ州で開催されたPGAツアーのホンダ・クラシック最終日は、重いアルコール依存症から立ち直って戦線復帰した37歳の米国人選手、クリス・カークが7年9か月ぶりのカムバック優勝を飾り、ツアー仲間や大観衆からの温かい拍手の中、思わず涙ぐむドラマチックな結末だった。
PGAツアーのソニー・オープンといえば、新年早々、ハワイで開催される賑やかな大会である。タイトル・スポンサーが日本企業であるおかげで、毎年、たくさんの日本人選手がスポンサー推薦で出場することでも知られている。
2023年の年明け早々、米ゴルフ界で珍事が起こった。今年のマスターズ出場資格を手に入れているスコット・ストーリングスという米国人選手の元に、昨年のうちに届くはずだったオーガスタ・ナショナルからのマスターズ招待状が、待てど暮らせど届かず、「どうして僕には招待状が来ないんだ?」と不安に思っていたところ、同姓同名の別人の家に届いていたという珍しい出来事だった。
昨秋、米欧両ツアーで戦うオランダ人プロゴルファーのアン・バン・ダムが「12月のハーフ・アイアンマン・レースに挑戦する!6時間以内で回る!」と宣言したことが、米欧ゴルフ界で話題になった。
スコットランドの名門ロイヤル・バークデールが舞台となった2008年全英オープンは、左膝の手術を受けたばかりだったタイガー・ウッズが欠場し、開幕前は「ウッズ不在の淋しいメジャー」と呼ばれていた。
PGAツアーには50歳以上のシニア選手を対象としているチャンピオンズツアーというものがある。そこには往年の名選手たちが勢揃いしているため、「PGAツアーのレギュラー大会を見るより、お馴染みの顔ばかりのチャンピオンズツアーのほうが面白い」という声をしばしば耳にするほど、米国では高い人気を誇っている。
今年の全英女子オープンで4ホールに及んだサドンデス・プレーオフに敗れた韓国出身のチョン・インジの話は、先月のこのコーナーで紹介したばかりだが、今回は、そのサドンデス・プレーオフを制し、メジャーの栄冠を掴み取った南アフリカ出身の33歳、アシュリー・ブハイのことをお伝えしようと思う。
スコットランドの名門ロイヤル・バークデールが舞台となった2008年全英オープンは、左膝の手術を受けたばかりだったタイガー・ウッズが欠場し、開幕前は「ウッズ不在の淋しいメジャー」と呼ばれていた。
コロナ禍の影響で12月に開催された2020年の全米女子オープン最終日の展開は、日本のゴルフファンの記憶にも残っているのではないだろうか。あの日、単独首位で最終日を迎えたのは日本の大スター、渋野日向子だった。2019年に全英女子オープンを制した渋野には、メジャー2勝目の期待がかかり、渋野ファンは固唾を飲んで見守っていたことだろう。
2019年9月に英国の名門ウェントワースで開催されたDPワールドツアー(欧州ツアー)のビッグ大会、BMW―PGAチャンピオンシップの2日目のこと。キャップの下からはみ出した“ロン毛”と優しい笑顔がトレードマークの英国人選手、トミー・フリートウッドは、自身のプレーを終えた後、18番グリーンに一人の少年を招き入れた。
キャメロン・スミスは現在28歳のオーストラリア出身選手。2015年からPGAツアー(米ツアー)で戦い始め、すでに通算5勝を挙げている。メジャー大会でも何度も優勝争いに絡んでいるが、残念ながらメジャー初制覇はいまなお達成されておらず、「スミスにメジャー・タイトルがないことは米ゴルフ界の七不思議の1つ」とまで言われている。今年だけを見ても、4月のマスターズではスコッティ・シェフラーと最後まで勝利を競い合い、3位タイに甘んじた。
米ツアー選手のウィル・ザラトリスと言われても、日本のゴルフファンの大半は「全然ピンと来ない」と感じることだろう。しかし、「松山英樹が優勝した2021年マスターズで、最後まで松山に食い下がり、2位になった若い米国人選手」と言われたら、「ああ、あのときの、ひょろっとした体型でちょっと気の弱そうな雰囲気のあの選手のことか」と思い出す方々は多いのではないだろうか。